遊ぶ園長先生がときめいた遊び日誌~保育園の遊び環境を考える

ぎふ木育と保育、出合うこととつながること―保育園の遊び環境を考える#6

2021.08.27

「木育」との出合いで、保育園の環境にもさまざまな変化がありました。園長先生が語る保育園の遊び環境、最終回です。

ぎふ木育と保育、出合うこととつながること―保育園の遊び環境を考える#6

皆さんは「木育」という言葉をご存じですか?
「木育」とは暮らしの中に木を取り入れ、森の恵みを守っていく活動です。
岐阜県では「ぎふ木育」として、県全体で取り組んでいます。

10年くらい前にまだ「木育」という言葉が一般的でなかった頃、わたしの所属するぎふグッド・トイ委員会のメンバーに、それぞれの場で木育を実践する人がいました。
わたしの生活からかけ離れている世界のことを見たり聞いたりすることが新鮮でした。
でも今思えば、かけ離れているどころかこんなにも身近で、保育と結びつくだけでなく日常の風景であり、生活であり遊びであることなんだと実感しています。

今回は、ぎふ木育と人とのつながりについて語りたいと思います。

ヒノキの香りに包まれて遊ぶ

ぎふグッド・トイ委員会で、木育イベントのスタッフとして参加し、今まで知らなかった事や物に出合うことができました。
保育園以外の場所での出合いは、いろんな扉をノックして迎えてもらうようなワクワク感があります。

例えば、ヒノキを職人さんがカンナで削ると、ストッキングのようなきめ細かい1枚の薄い布のようになります。床にあふれるほど散らばる素材を見た時の感動は忘れません。
それを子どもたちが身にまとって遊びます。リボンにして髪飾りにします。わたしは三つ編みしてみました。

イベント終了後、袋にたくさん詰めて翌朝、保育園に持って行きました。袋をあけるとヒノキの香りが保育室に広がりました。その日、ビニールプールに入れると大喜びで寝転んだり天井に舞い上げたりして遊びました。

またある時には、ヒノキの伐倒体験に参加しました。
生木の皮はつるっとめくれて真っ白な木肌がみずみずしいことを知りました。この日も丸太を車に積んで帰り、翌朝園庭で子どもたちと遊びました。
こんな体験は、保育園の日常ではできません。

おが粉で粘土遊び

おが粉を粘土にできることを教わりました。
最初は、分けていただいたサクラやヒノキのおが粉に水、サラダ油、小麦粉、のりを調合して用意していたのですが、タライの中で混ぜて粘土にすることを一から子どもたちがやるようになりました。

おが粉粘土遊びは、混ぜることも楽しい、だんごにして遊ぶのも楽しい、そして型抜きするとクッキーみたいでおいしそう。
子どもの仕事をするときの手の動きがなんとも愛おしいですね。

保育園の子どもたちが大好きな遊びのひとつです。今は、コロナ禍で以前の様にみんなで混ぜて遊ぶことができないのは残念です。

こんなふうに保育園の子どもたちに園だけではできない環境を提供できるのは、とても有難いことです。
そして、わたしたちの保育園での子どもたちの興味や関心を知って、活動の場や素材、遊びの紹介をしてくださる方とのつながりの中で、どんどん広がっているのです。

保育園から地域へ

これまで、わたしが園長を務める園の、保育や遊び環境についてお話してきました。
保育者や、子育て中の方の参考になれば嬉しく思います。
最後に、園のことを少しだけご紹介させてください。

民営化になって7年目の保育園です。
岐阜県が各施設に県産材のおもちゃを無料で貸し出しをしてくれていますので、たくさんのおもちゃを借りて遊んでいました。
岐阜県庁までおもちゃを借りに何度も出かけたことも、今では懐かしい思い出です。

その後、少しずつ購入した県産材のおもちゃで、毎日子どもたちは遊んでいます。
県から「ぎふ木育常設広場」として認定を受け、未就園の親子にもご利用いただいています。
「ここへ来るとほっとするね」
そんなあたたかい居場所になったらいいと思います。

今月は、地域の親子向けの「おもちゃの広場」も開催予定です。
人数を前半、後半5組にわけての限定開催です。

できることをできるように無理なくやっていく。ゆるやかに・・・これがわたしたちの保育園のスタンスです。
保育園での活動が少しずつ地域に広がっていくことを願いながら。

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6.ぎふ木育と保育、出合うこととつながること


加藤 志保
執筆者保育園長、おもちゃコンサルタントマスター、ぎふ木育指導員
加藤 志保
公立保育園で保育士として勤務後、私立保育園に。保育園では「おもちゃの広場」を開催し、子どもの発達や興味に合わせた遊び環境を日々考えています。遊びに夢中になる子どもの姿を、保護者や保育者に伝えていきたいと思っています。

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