暮らす【連載】作業療法士が伝えたい 小さなおもちゃの大きな力
限りない創造の力 魔法の「KAPLA」
2019.01.06
「KAPLA」は魔法のようにいろいろなものを創りだせる! 作業療法士が語るおもちゃのお話、第4回目。
おもちゃ・遊びに興味がある方ならご存じかと思いますが、おもちゃ担当の作業療法士として紹介しないわけにはいかないのが、このKAPLA(カプラ)です。フランス生まれのKAPLAは厚み:横:縦が1:3:15のフランス海岸松でできたシンプルな木製ブロックです。KAPLAの素晴らしさはまさに、創造の可能性に限りがないことです。
東京おもちゃ美術館では、2011年3月の東日本大震災の直後から、被災地への支援を行いました。東京おもちゃ美術館の呼びかけに応じて全国各地、世界各地からたくさんのおもちゃが集まり、多くのボランティアの手によりおもちゃセットを作成。そのセットを活用した「あそび支援隊」が、被災地でキャラバン(移動おもちゃ美術館)を開催しました。そのおもちゃセットに必ず入っていたのがKAPLAです。
ある被災地でのお話です。300人程が避難しているお寺でした。子どもからお年寄りまで本堂に集まって、キャラバンの持ってきたおもちゃで遊んでいました。
その中でもKAPLAは人気で、小さな子どもから中学生、高校生まで集まって、畳の上にドンドンドンドン積み上げていきました。その風景をまわりの大人達が取り囲んで見ています。KAPLAはとうとう、天井まで到達、みんなで拍手喝采でした。
外はがれきの山、みなさん、遊びに集中すること、何か作り上げることで心の傷を癒そうと懸命だったに違いありません。
さて、KAPLAそのものに話を戻すと、木製ブロックとしての構成能力、創造性、イマジネーションなどが注目すべき点です。厚み1:横3:縦15比率の規則性を持つKAPLAで作られる構造物は、例えばレールと道路のような比較的平面的なものから家やお城のような立体的な構造物まで、自由にかつ美しく展開することができます。この規則性が限りない創造性を助けてくれているような気がします。
KAPLAはテレビゲームとは違った手先の器用さ、物のバランス、重力の力、位置や関係性のリアリティを学ぶことができ、さらにできたときの達成感や有能感、失敗したときの挫折感、共同して作った連帯感など、心の動きにも大きく働きかけます。リハビリの現場では、理学療法士がやっても上がらなかった手が、KAPLAを上に積み上げるうちに上がったなんて話も聞きます。
また、KAPLAには、『KAPLAのまほう』という見本の冊子があります。この「見ながら作る」=模倣ができるというのも、人の優れた能力です。情報を直接的に習うのではなく、模倣を通して学習できる効率の良さを、人は持っているのです。
年少さんくらいはちょっと並べたり積み上げたりして、自分の感情や認知を表に出すというのが重要な発達段階ですが、年長さんあたりは、「見本をまねて作ってみよう」と考えるようになり、他者の視点や評価を徐々に受け入れるようになってくるのです。その能力を促したりガイドをしてくれるのが、『KAPLAのまほう』です。
まわりの大人がビックリするようなものを作り上げることができる。これがKAPLAの「魔法」なのでしょうね。
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【連載】作業療法士が伝えたい 小さなおもちゃの大きな力
遊ぶ暮らす知る2019.01.06