作業療法士パパが実践した「物を取り出す」遊び Part1 (ハイハイ~歩き始め期) 作業療法士パパが実践した親子でふれあい遊び #8
2025.08.01
子どもが楽しく成長していくために、作業療法士で2児のパパが実践した親子のふれあい遊びを紹介します。

皆さまこんにちは。作業療法士の福永と申します。
このシリーズでは、私が実際に娘たちと遊んできた経験をもとに、親子でのふれあい遊びを紹介しています。
私は、遊びの内容だけでなく「子どもたちとどうやって関わるか」「子どもたちにどんなふうに寄り添うか」もとても大切だと思っています。そんな想いから少しずつお話を綴っています。
今回は、「物を取り出す」をテーマにした遊びをご紹介します。とってもシンプルですが、奥が深く様々な展開もできる遊びです。少しの工夫で、遊びをもっと楽しく豊かにしてくれます。
また、紹介している遊びを集めると日めくりカレンダーになるように、番号をつけながらカードのようにしています。実際に遊んでいる様子も見られるように動画のリンクを貼っておりますので、是非そちらの方もご覧ください。
目次
物を取り出す遊びは怒られやすい!?
子どもたちは好奇心旺盛ですよね。
気づいたらティッシュを全部引き出したり、おもちゃをポイポイ出したり、トイレットペーパーをぐるぐる出していたり…。
大人にとっては「片付けが大変!」「やめて〜」と思って、つい怒ってしまいそうになったり、止めてしまうような遊び、ありますよね。
でも実は、こうした“物を取り出す”遊びも子どもたちにとっては大事な学びの時間となっています。目や手を使って、思ったとおりに出せた!と感じられることで、達成感や自信にもつながっていきます。
子どもたちのやりたい気持ちに少し寄り添って、「こういう遊び、いいよね」と見守ることも、親子の素敵な時間のひとつです。
遊びを止めたくなる気持ちも分かります!!…分かるんですが、子どもたちの「やりたい」を奪わず応援できると良いですよね。
そんな時には、“遊び専用”のティッシュや箱を用意してみると、大人も心に余裕を持ちやすいかもしれません!
【実践】親子で「物を取り出す」遊びを楽しんでみた
20:ティッシュ抜き遊び
(Instagram投稿動画:20「本当は魅力あるティッシュ抜き」)
お子さんがティッシュを箱から全部抜ききったときの満足そうな顔、見たことありませんか?
次から次へとティッシュが出てくるのは面白くワクワクするし、出し切った!という「達成感」も得られます。箱の中にティッシュが無くなったらこの遊びは一旦終わりだな、という「見通し」「切り替え」にも繋がっていきます。
終わったということは、違う遊びへの次の一歩になる側面もあります。
まだあるかな?と箱をのぞき込んだり、出したティッシュを戻してみたり、箱の中に他のおもちゃを入れてみたり、自分の手や足を入れてみたり、最後はつぶしてみたり…。
出したティッシュは袋にまとめて入れてしまうのはどうでしょう。我が家では「床を拭く用ティッシュ」として使っていました。娘も、今度は袋から取り出す遊びへ移行していました。
21:箱から取り出す遊び
(Instagram投稿動画:21「なくなるまで取り出したい!」)
手を突っ込んで、ゴソゴソ…と探り、掴んで取り出す遊びです。
穴の中が見えなくても、手の感覚で探るこの遊びは、まさに“触って学ぶ”体験です。
以前、ふれあい遊びの回でも紹介しましたが、触覚遊びは発達の土台となる大切な遊びです。
箱の高さを調整することで、お子さんの発達段階に合わせられるのもポイント。座れる子なら座って手が届く高さに、立てる子には立った時に手が届く高さにしてみましょう。
写真の箱は、100円均一で買った「スーパー袋をストックする箱」です。箱は何でも構いません。
22:ダイナミックに引っこ抜く遊び
(Instagram投稿動画:22-1「引っこ抜く遊びの達成感」)
(Instagram投稿動画:22-2「引っこ抜く遊び:エクスカリバー!!」)
身近な家具、段ボールやおもちゃを使って、簡単に出す・抜く遊びが楽しめます。
上の写真は2つのブロックの間におもちゃ(0の形のスポンジ)を挟んでいます。下の写真は、段ボールに穴を開けて、棒状のスポンジ製おもちゃを刺して入れています。
家の中にある家具と家具の隙間にぬいぐるみを挟んで引っ張り出す、という遊び方もできます。
ぴったりのサイズにすると、引き抜く時に抵抗感があり、ギュッと力を入れて取ることになります。
これは、体全体を使って遊べているということ。全身に力を入れる遊びは、体幹や肩回りの発達を促す、とっても良い遊びです。
【解説】作業療法士から見たこの遊びの「ここがすごい!」
20:2つのことを同時に行っている!!
ティッシュ抜きの遊びをよく見てみると(動画)、片手で箱を押さえながら、もう片方の手でティッシュを引き抜いています。
これは、両手の協調運動を行っているということです。両手の協調運動というのは、両手が別々の役割を担いながら、じょうずに協力させて使うことです。
日常生活で行う作業のほとんどで両手の協調運動を行っています。例えば、消しゴムで消す+紙を押さえる、ハサミを動かす+紙を支え動かす、などがあります。
このティッシュを引き抜く動作も、本当にすごいことなんです。
ぜひ、「あ、いま両手を使い分けてる!」という視点で見守ってあげてください。
21:姿勢をしっかりと保っている!!
この箱から取り出す遊びで注目してほしいのが「姿勢・体の支え方」です。
発達の原則の中に、「中枢から抹消へ」というものがあります。これは、まずは体幹(中枢)が安定し、その上で腕や手先(だんだん抹消へ)がスムーズに動くようになるという流れのことです。
集中することや、手先を上手に動かすためには、まずは体がしっかり安定していることが必要です。
体幹がふらふらしていると、手先もふらふらしてしまいます。頭がふらふらしていると、物をしっかり見て捉えることができません。
この遊びでは、まだおぼつかないながらも、バランスを取りながら手を動かすという高度なことを行っています。
重力に負けずに、しっかり体を持ち上げ安定できている場面をぜひ見守ってあげてください。
22:安定するからこそ色んなことができる!!
この引き抜く遊びでは、体幹に力を入れ姿勢も保っていますし、肩回りを大きく動かしています。肩だけでなく、頭、目、首、体幹・肩・肘・手首・手指といった体の複数の箇所を連動させて行っている遊びといえます。
運動の発達は、「安定して止まれる力」が「動ける力」につながっていきます。
たとえば、しっかりお座りできるようになって「安定して止まれる力」が身に着くと、次は「動ける力」として自分からわざと体を傾けて、手を前に出して…とバランスを崩すような動きができるようになります。
このバランスを崩したり、元に戻したりといった繰り返しが移動することに繋がります。
棒を引き抜く時の動画も是非ご覧ください。なかなか難しいながらも粘って最後までやり抜く姿を見ることが出来ます。
難易度の目安は「すこーし難しい」ぐらいが良いと思いますが、こういった「抜けた!」「できた!」という体験が、目的をもって行動する力や次のチャレンジへの意欲につながっていきます。
普段なら止めてしまいそうな遊びも、大人が少し見方を変えてあげるだけで、「発達を支える大事な遊び」に見えてくるはずです。
そんなお子さんやお子さんのしている遊びに寄り添える大人の存在は、子どもにとって何よりの“遊び仲間”であると思います。
次回は「物を取り出す」Part2として、もっと違うものを使ったり、細かな動きも使った遊びをご紹介します。どうぞよろしくお願いいたします。

- 執筆者作業療法士、おもちゃコンサルタント
福永 寿紀 - 2児の父です。作業療法士として発達領域で勤務していた経験があり、現在は大学で教員をしています。作業療法士仲間と、発達×アナログゲームをテーマに動画配信中⇒【ネコさんとカメさん『発達とボードゲーム』チャンネル】、親子遊びをInstagramで投稿中⇒【hisanori.f】で検索してみてくださいね。
作業療法士パパが実践した 親子でふれあい遊び
遊ぶ育む2025.08.01
