遊ぶ【連載】作業療法士が伝えたい 小さなおもちゃの大きな力

巧みの力 手を使う遊び「ファミリーおてだま」ほか

2019.03.01

手先の器用さには神経や脳が関わっています。作業療法士が語るおもちゃのお話、最終回は3つのおもちゃをご紹介。

巧みの力 手を使う遊び「ファミリーおてだま」ほか

シリーズ最後は、「巧みの力」と題して巧緻性(こうちせい)についてお話しします。「最近はゲームばっかりして、不器用な子が増えた」と言われますが、器用、不器用はどこが違うのでしょうか。巧みを促すおもちゃの力、巧緻性を高めるおもちゃをご紹介します。

たとえば、お財布から一円玉を取り出すとしましょう。人差し指と親指で適度な力加減でつまんでいますか?また、お箸でお皿に入った小豆を移し替えるとき、お箸の先がちゃんと会わないとつかめません。その他、ひもを通したりボタンをはめたり、手先を使うことは日常的に多いことでしょう。

足の指を1本ずつ動かせる人は珍しいと思いますが、手の指は1本ずつ動きます。これは筋肉と神経の違いで、手指には多くの筋肉とそれをコントロールする神経があります。例えば、親指には曲げる、伸ばす、開く、閉じる、それぞれの関節ごとに筋肉が「走って」います。それぞれには神経が複雑についています。その神経は腕から背中を通って、最後は脳につながっているのです。脳では1本1本の神経に命令を出しているのです。こう考えるだけで、脳にはお疲れ様と言ってあげたくなりますね。

さて、子どもの運動の発達を考えたとき、赤ちゃんのうちから立ちそうになったり、モグモグしたり、触ったものをつかんだり、思わず、「うちの子は天才なんじゃないかな!」と思うことがあります。でも、これは「反射運動」というものです。「反射」は生まれつき持っているものですが、6ヶ月から2歳くらいには一度、隠れてしまうのです。反射の代わりに「発達」してくるものが「随意運動」です。つまり思いのままに動かせる能力なのです。手指を思いのままに動かし、道具を使いこなせることが「巧みの力」と言えるのではないでしょうか。

思いのままに使いこなせるには練習が必要です。そういう練習に適しているおもちゃを3つ紹介します。

ファミリーおてだま

手先の練習に「お手玉」と聞いただけで皆さん納得。そのお手玉がグループで遊ぶゲームになって登場です。
メンバーが順に課題の書かれてあるカードを引きます。例えば、「手の甲に乗せる」カードを引いたら、手に持ったお手玉を上に上げてパッと手を回して甲に置きます。難しいものでは「背中に乗せて3回まわる」などというのもあります。そのほかいろんな技のカードがあるので、グループで楽しく遊ぶのにうってつけです。お手玉は高齢者の方には馴染みがあるので、世代間の交流にもよいゲームだと思います。

ユビコプタ

片手に納まるメガネ型の木のおもちゃで、中心にポッチがついているのでコマにもなります。このおもちゃの面白さを表現するなら、「ハマル」系です。ボールペンをくるくる回す人、いるじゃないですか。なんとなく手に触ると「やっちまう」系。このユビコプタも、2個手に馴染ませながら、意のままに「カチカチ」鳴らしたり、こすったり、回したり。木の肌触りの良さに落ち着くんですね。

クルリン

重心に工夫がされた木の棒です。手で回してくるっと一回転させます。力加減と方向、タイミングをコントロールするためにコツが必要なおもちゃです。感覚的には、できなかったけん玉ができたときのような、達成感を味わうことができる一品です。こちらも木の肌触りの良さがありますが、それを感じさせないくらい夢中にさせる難易度の高いおもちゃです。

ユビコプタにしてもクルリンにしても、遊び方に決まりはなく、限りなく自由ですが、その代わり遊び方や技の工夫がおもしろさに関わってきます。きっと遊ぶ人を「遊びの達人」にしてくれることでしょう。

さて、器用になるには繰り返し繰り返し、神経と筋肉をスムースに働かせるようになることではありますが、不器用だって味があって、いいじゃないですか。多様性の中にいろいろな価値があり、うまくいったり、失敗したり、ワクワクドキドキが面白いと思えるのは楽しいことだと思います。

おもちゃのいろいろな力を見てきました。おもちゃはいろんな人に生きる力を教えてくれます。いまこそ、おもちゃの力が本当に必要とされる時代なのかもしれませんね。

松田 均
執筆者作業療法士、おもちゃコンサルタント
松田 均
発達障がい分野を専門にしています。おもちゃに一番詳しい作業療法士と呼ばれています。

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