遊ぶ【連載】子どもたちの笑顔のために~木のおもちゃの製作現場から思うこと~
まあるいくるま「ころんころん」大解剖!!
2018.09.28
ころんとした丸い木のくるま「ころんころん」。この形だからこその遊び方と誕生秘話とは?連載第1回目です。
これが「ころんころん」です
「これ、なんですか?」「マウス?せっけん箱?」「丸くてかわいーー!」
2014年のグッド・トイにも選定された「ころんころん」。イベントやデパートの催事などで出店していると、お客様の反応はこのように様々。なかには首を傾げながら考え込んでいる方も…。当然といえば当然ですね。パッと見ただけでは丸く磨かれた小ぶりなただの木の塊ですから。でもただの木の塊じゃありませんよ。この形だからこその遊び方。そしてその誕生秘話をお話します。
サイズ:高さ5cm×巾5.5cm×長さ8cm
使用樹種:スギ ヒノキ 無塗装
まずは遊び方からご紹介しましょう。
クルマとして、赤ちゃんが手を添えてブーブー♪曲線が小さな手になじみます。
そして「ころんころん」のネーミングの由来であり、一番の特徴がこちら。
ちょっと前方に押すように。えい!
ころん。
一回転して・・・カタン!
写真では縦方向に転がっていますが、側面を利用して横方向にも転がす事ができます。
そしてこんなことも。
下方向に滑らせてはじくように。
前方にコロコロ~。
こんな動きを見るだけでも赤ちゃんは楽しいんですよね。
そして表面は滑らかですべすべ。思わずなでなでしたくなる感触です。大人の方が「自分用に」と言って購入されることもしばしば。
ではこの「ころんころん」がどのようにしてできたのかご紹介しましょう!
試作、試作、試作…
試作の変遷。ザックリとですが形は左から右にこのような経過をたどっています。
右端が現在生産中の最終型。左端が試作第一号。デカっ(笑)タイヤも外に出ていたんですね。
スタートは「丸いフォルムのくるまがあったらいいなー。赤ちゃんの手にもなじむし」という気持ちで作り始めたのですが結果的に右の形に。
使用する素材、タイヤの大きさ、タイヤ軸の太さや長さ、穴を削る深さ、丸みの角度など細かい部分の調整も含めると20~30パターンほど試しました。写真中央の段階で「よし、これでOKかな」と、ある時作業台の上で仕上げのヤスリをかけていたところ、うっかり落としてしまったことがありました。すると…バンパーのあたりがパキッと割れているではありませんか!
ここがパキッと。
振り出しに戻る。ガッカリ。
でも、その時、「ん?もしや・・・できるかもしれない!」とひらめいたことがあります。
遊びとおもちゃ、点と点がつながる
私はおもちゃ作家になる前、新潟市の子育て支援センターで保育士として勤務していました。そこは保育園や幼稚園とは違ってパパやママ、おじいちゃん、おばあちゃんが未就園のお子さんを連れて遊びに来て、一緒に時間を過ごす場所です。
その時に見た印象に残っている光景があります。おばあちゃんがお皿をコマの要領で床の上でまわして見せてあげて遊ぶ姿。何かを転がして見せてあげていることもありました。それを見た赤ちゃんは大喜び!
そんな記憶と今試作しているこの丸い車。おもちゃをきっかけに生まれる遊びと、それを通して表現したいこと。点と点がつながった瞬間でした。
思わぬ形ではありましたが、この段階で脆弱性に気づくことができたのは幸運だったのかもしれません。その脆弱性を補う為に生まれたのが、外からはタイヤが見えないあの形なんです。そして、転がす、回すという新しい遊び方が生まれました。
両サイドから貼り合わせることで強度アップ!ここから丸く削っていきます。すると、前後だけでなく横方向にも転がすことが出来るようになりました。
床の上で遊んだり、膝に座ってテーブルの上でころんころんと。そうしているうちに、赤ちゃんはきっと手をのばしてくれるでしょう。触ってみて思いがけない動きを楽しんだり、ハイハイしながら「まてまて~」と追いかけたり。
この極めてシンプルな形から様々な遊びの場面が生まれ、その周りには笑顔があふれることを願っています。
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遊ぶ育む知る2018.09.28