遊ぶ日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし

移住者や子育て世代など、新しい視点で山村ならではの課題に取り組む/日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし6

2023.01.27

椎葉村で育つ子どもたちについてお伝えしてきた連載の最終回です。今回は、大人たちの新たな取り組みをご紹介します。

移住者や子育て世代など、新しい視点で山村ならではの課題に取り組む/日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし6

宮崎県椎葉村在住のおもちゃコンサルタント、池田文です。
普段は、村の交流施設でのおもちゃイベント企画、ベビーシッターとしての訪問保育、小さな学習塾の運営などを通して、地域の子どもたち・子育て中の親御さんと関わっています。

この連載では、山間の小さな村で育つ子どもたちを紹介しながら、子どもの育ちに関する私なりの気づき・学びを子育て中の皆さんや、保育や子どもに関わる皆さんと共有したいと思っています。

今回は、これまで紹介してきた子どもたちではなく、子どもを取り巻く大人の様子について書いてみます。
椎葉村で子育てをしている人たち、子どもの体験の幅を広げる取り組みをしている人たちなどは、どんな思いをもっているのでしょうか。

目次

子育てのハードルの高さ

お嫁さん・移住者の子育て

新しい学びの場づくり

子育てのハードルの高さ

険しい山間地で人口も少ない、高校もないとなれば、ここで子どもを育てることをハードルに感じる人もいるでしょう。
教育の選択肢という点において、都市部と比べるとかなり制限されているのも事実です。保育園や学校を「選ぶ」ということ自体できませんし、それぞれの場の活動において多様な選択肢があるわけではありません。
学校外でも、子どものための習い事や学習塾、親子で通えるサービスもありません。

子どもたち自身はそれぞれ個性的ですが、目に見える子どもの生活としては、多様性は少ないですし、何か違うことをやりたいと思った時に地域や学校の賛同をすぐ得ることも難しいことも多いです。
子育てにおいて「こういうふうに育てたい」という思いや、子どもの「こうしたい」という思いを叶える環境がない現実を保護者が厳しく感じる場合もあるようです。

お嫁さん・移住者の子育て

こうした保護者の思いはこれまであまり共有される場がありませんでしたが、最近になって、村にお嫁に来た人たちが中心となって作られた子育てサークルでおしゃべりをしたり、村の施設でのイベント開催であったりと少しずつですが、新しい動きが生まれているのを感じます。

また自然の近くで、あるいは、子どもに寄り添ってくれる地域の人たちのいる場所で子育てをしたいと移住してくる人たちもいます。
外から来た人たちも、「椎葉のこんなところが素敵」と「もっとこうなったらいいなあ」という両方の思いを持ちながら、それぞれ自分の住んでいる地区や関係する場所で働きかけをしているようです。

新しい学びの場づくり

こうした中で、村でも新たな学びの場づくりが行われています。
生涯学習の一つ、英会話は小学生に人気の講座です。椎葉村と椎葉村の子どもたちのことが大好きなALTの先生が、学校の授業とは一味違う英語のレッスンをしてくれています。

椎葉村の英語学習

小さい子から高学年まで夢中になって英語を学ぶ

他にも、宮崎市内の大学生によるオンラインでの学習支援や、eスポーツ教室やプログラミング教室、3D教室なども実施されてきました。
こうした取り組みはまだトライアル期間であり、参加しているのは椎葉の一部の子どもたちではありますが、この子たちが「楽しかった」「挑戦できた」と思って次の経験に繋げてくれたらいいなあと思います。

椎葉村の英語学習

e スポーツに挑戦

最後に

椎葉の子どもたちのことを少しでも知ってほしい、という思いで、6回にわたり紹介させていただきましたが、まだまだ十分ではありません。もっと気軽にこの感じを体験してもらえるといいのに、という思いと、ここまで遠く離れているからこそ他とは違う子どもたちの姿が見られるのかな、という思いがあります。

「まずは会ってみないとわからない」「来てみないとわからない」というのは、椎葉の人たちがよく使う言葉です。スマホでなんでもすぐにわかる時代に逆行しているように聞こえますが、みんなで楽しく遊んでいる子どもたちの姿を見るとなんだか納得してしまう自分がいます。

椎葉の子どもたちの・子どもたちとの「探求」はまだこれからも続きます。

≪≪≪前回の記事「中学から寮生活、高校は村外へ。自立を後押しする環境」

池田 文
執筆者おもちゃコンサルタント。宮崎県の椎葉村で子育て支援に関わる。
池田 文
静岡県出身。2019年4月より、日本三大秘境椎葉村に移住しました。 前職が保育士だったこともあり、椎葉で育つ子どもたちに関心があります。先が見えない時代、子どもたちがいろいろなことに挑戦していける土台ってなんだろう? 椎葉にその答えがある気がしています。現在、村の交流施設でのおもちゃイベント企画、ベビーシッターとしての訪問保育、小さな学習塾の運営などを通して、地域の子どもたち・子育て中の親御さんと関わっています。

日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし

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