遊ぶ日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし

中学から寮生活、高校は村外へ。自立を後押しする環境/日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし5

2022.12.23

中学・高校から寮生活を送る椎葉の子どもたち。幼いころから地域の大人と関わる経験が、自立を後押しするようです。

中学から寮生活、高校は村外へ。自立を後押しする環境/日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし5

宮崎県椎葉村在住のおもちゃコンサルタント、池田文です。
普段は、村の交流施設でのおもちゃイベント企画、ベビーシッターとしての訪問保育、小さな学習塾の運営などを通して、地域の子どもたち・子育て中の親御さんと関わっています。

この連載では、山間の小さな村で育つ子どもたちを紹介しながら、子どもの育ちに関する私なりの気づき・学びを子育て中の皆さんや、保育や子どもに関わる皆さんと共有したいと思っています。

椎葉村では、中学から親元を離れる子どもも多いです。そうした子どもたちの自立には、家族以外の大人との関りが重要だと感じます。
今回は、椎葉の子どもたちの自立について書いてみたいと思います。

目次

中学は寮生活、高校は村外へ

暮らしの中で、地域の人たちに見守られながら自立する

中学は寮生活、高校は村外へ

椎葉村には高校がありません。中学を卒業して進学する場合は、村外に出て、寮や下宿生活、もしくは一人暮らしなどをして学校生活を送ります。
さらに、中学時代も村内が広く送迎が大変なことから、寮生活を送る子どもが多いです。
椎葉の親御さんからよく聞かれるのは、「子どもと一緒に過ごせる時間は短い」ということ。子どもたちも、先に家を出ている兄姉や地域のお兄ちゃん・お姉ちゃんたちを見て、いずれ来る「離れて暮らす」ことをそれなりにイメージしながら育ちます。

椎葉では高校になると寮生活

寮での食事風景

暮らしの中で、地域の人たちに見守られながら自立する

小学生は、放課後にスポーツ少年団に入り、地域の人たちがコーチや見守りをします。練習自体は大変な部分もあるそうですが、あたたかい地域の人たちのおかげでみんなそのスポーツが大好きになっています。
上級生になると、大人が来る前に着替えてグラウンドや道具の準備をして自主練習をして待っています。自然に小さな子どもたちのサポートもしています。

椎葉村のスポーツ少年団の子どもたち

自主練中のスポ少の子どもたち

スポーツ少年団がない日や参加していない子どもは、スクールバスで登下校しています。こちらも地域の人が運転をしていて、乗り忘れている子がいないか、忘れ物はないか、一人ひとりを丁寧に見守ってくれています。
それでも時に乗り忘れて泣きそうになってしまう子どももいますが、そうした経験もまた自立への一歩かもしれません。

椎葉村のスクールバス

スクールバスでの登下校

以前紹介したように、子どもたちの地域行事への参加も、地域の大人たちが丁寧に関わりがあるからこそ、続いているものの一つです。毎年、地域で子ども自身が自分の成長や役割を感じることができる貴重な場になっています。

また、家族合同で週末一緒に遊んだり、一家族の保護者が他の家の子どもを引き連れて出かけたりすることも多いです。
週末のイベントなどに遊びに来る椎葉の人たちは、二人のお母さんが八人の子どもたちを連れてくるなど、時に保育園のようです。

こうして椎葉の子どもたちは、周りにたくさん頼れる人がいる中で、自分の家族以外と過ごす経験を積んでいきます。

村外の高校に子どもを送った親御さんは、「なんでも自分でやらないとね、前から家でもやらせていたから」とのこと。

小さな頃からいろいろな場面で自立する機会を与えられながら育つ椎葉の子どもたち。
生活の中で自分で行動する体験は、時に、習い事やなんでも与えられる環境よりも、子どもたちの力を伸ばしてくれるものかもしれない、と外から来た私は椎葉の子どもの姿から学んでいます。

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池田 文
執筆者おもちゃコンサルタント。宮崎県の椎葉村で子育て支援に関わる。
池田 文
静岡県出身。2019年4月より、日本三大秘境椎葉村に移住しました。 前職が保育士だったこともあり、椎葉で育つ子どもたちに関心があります。先が見えない時代、子どもたちがいろいろなことに挑戦していける土台ってなんだろう? 椎葉にその答えがある気がしています。現在、村の交流施設でのおもちゃイベント企画、ベビーシッターとしての訪問保育、小さな学習塾の運営などを通して、地域の子どもたち・子育て中の親御さんと関わっています。

日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし

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