遊ぶドイツの保育園から見えた 遊びのデザイン

一人ひとりを尊重する生活環境‐取り入れたい? 真似したい!ドイツ保育園の遊びのデザイン5

2021.11.26

ドイツの保育園には、子どもたちを尊重し、自分で判断して行動できるような環境設定がされていました。おもちゃ店主のレポート第5回。

一人ひとりを尊重する生活環境‐取り入れたい? 真似したい!ドイツ保育園の遊びのデザイン5

木のおもちゃチッタ店主、あそび環境コーディネーターの横尾です。
この連載では、2020年ドイツの保育園で見た、子どものための「遊びのデザイン」についてお話していきます。

お家のぬいぐるみと一緒。お昼寝のお部屋

日本では保育園は第二のお家、お家と保育園は地続きであると言われています。それはドイツでもかわりません。

こちらの保育園はお昼寝専用のお部屋がありました。
この写真では写っていないのですが、一面の壁はやわらかなトーンのブルーの塗装で、寝具もブルーで統一されいます。
ブルーには体温や脈拍を下げる効果があります。お部屋に入いるとこれからお昼寝だと気持ちの切り替えがすぐできそうですね。入り口のドアには壁と同じ色のブルーの画用紙に星型をあしらったものも貼ってありました。

お布団にぬいぐるみがちょこんと置いてあります。これはお家から持ってきたぬいぐるみだそうです。壁には子ども達がぬいぐるみと一緒に眠っている写真が貼ってあり、保育士さんがぬいぐるみを間違えないようになっています。
自分の匂いがするぬいぐるみは安心感につながり、まさにお家と保育園が繋がっている感覚になれます。お昼寝がスムーズにできるように環境がデザインされています。

一目でわかる、自分で行動できる掲示物

保育園にはいろんな表示がありました。
例えば時計が並んだこの掲示物。みんなの目にとまりやすい場所にあり、今何をする時間なのか?それを見ればわかるようになっています。保育士さんが今からこれをします、と伝えなくても掲示を見て子ども達が行動するそうです。
大きなお家一つと小さなお家がそれを囲むように飾られています。
これは保育園に来た子は小さいお家から、保育園を現す大きなお家に自分の写真を移動することで誰が登園しているか?一目見てわかるようになっています。仲良しの○○ちゃん来ているかな?子どもたちが自分で確認することができます。

ドイツで生活する日本人の方に子どものお誕生日会の話を聞いたところ、参加者のお友達は「私は○○が苦手」「○○が嫌い」と次々と自分の食の好みを伝えてくるそうです。日本ではアレルギー以外でそういう主張はしないですよね。
ドイツでは私はこうしたい、こう思うと意思表示することが大事にされています。
保育園でも一緒でどの席で誰とランチを食べるのかなど、その子の意思で決められるようになっています。
こういう表示からも先生からの指示を待つのではなく子ども達の自主性を大切にしているのが伝わります。

本物のキッチン、本物の食器を使う

部屋の中に子どもサイズの本格的なキッチンがありました。
ふきんやお皿を洗う小さなスポンジ、先生が飲むためのコーヒーメーカーがあったり、やや雑然としている感じから、日常の中で使われているのがよくわかります。
そういう雰囲気はちゃんと伝わるものですよね。そういう物や場が醸し出す雰囲気は見えない形で子ども達に影響を及ぼしています。
おままごとではない、本物のキッチンで作業をすることで感じる食べ物の匂いや温度、手触り、カトラリーやお皿がぶつかる音。それらを体験することで食への興味やお当番を離れたとこでの自分の役割などへの意識が高まりそうです。自然とそういうことに意識が行き、考えるきっかけになっているのではないでしょうか?

写真手前に見えている子ども達のテーブルにはケースに入った紙ナプキン、お水の入ったピッチャー、ランチョンマット、グラス、お皿、ナイフとフォークが一人分ずつ子ども達も参加しながら用意されました。
テーブルの上にそれらが並ぶ様子は統一感があって美しく感じます。
見ていると子ども達一人一人を尊重し大切にしていることが伝わってきました。

*   *   *

ドイツの先生方が子どもを中心に保育目標を考え、それを「見える化」した、デザインした様子、次回もお楽しみに!

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横尾 泉
執筆者木のおもちゃチッタ店主、あそび環境コーディネーター、おもちゃコンサルタントマスター
横尾 泉
東京都多摩市の自宅で「木のおもちゃチッタ」を営みながら、保育園や家庭向けに遊び環境のアドバイス、研修などを行っています。【木のおもちゃチッタホームページはこちら】https://chitta-toy.shopinfo.jp/

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