遊ぶドイツの保育園から見えた 遊びのデザイン

園庭は自然と出会う場所‐取り入れたい? 真似したい!ドイツ保育園の遊びのデザイン6

2021.12.03

ドイツの保育園の園庭には、そり置き場がある?子どもたちが自然に親しめる工夫をおもちゃ店主がレポート。連載最終回です。

園庭は自然と出会う場所‐取り入れたい? 真似したい!ドイツ保育園の遊びのデザイン6

木のおもちゃチッタ店主、あそび環境コーディネーターの横尾です。
私は自宅で小さなおもちゃ屋を営みながら、保育園など子どものための施設やご家庭向けに遊び環境のアドバイス、研修などを行っています。
この連載では、2020年ドイツの保育園で見た、子どものための「遊びのデザイン」についてお話していきます。
今回はドイツの保育園の園庭についてご紹介します。

自然を大切にする国、ドイツ

ドイツの人たちは自然が大好き。週末は森に出かけたりクラインガルテンと呼ばれる貸農園で畑作業をするそうです。
宿泊したホテルの側にクラインガルデンがありましたが、どの畑も思い思いに素敵な小物を飾ったり、小屋が建ててあったりしてまるで絵本の世界が飛び出してきたかのようでした。

自然を大切にするマインドはいろんなやり方で保育園で見られました。
写真のように窓に雲や雪の絵が描かれています。窓を絵画の額のように見立て園庭の景色をうまく取り込んでいます。外の天気が変わるごとに窓の絵の雰囲気も変化していきます。別の窓の手前には雪の結晶模様の布が飾られていました。

ロフトの上階にある大きな窓だったので、外の園庭の様子が広く見えます。
窓の外の雪景色と布の結晶模様のコラボレーションから、季節感や外の冷えた空気感をより感じることができました。窓の外の景色をうまく取り込んでいます。

自分で植物を育てられる園庭の小さな畑

こちらはフレーベル幼稚園の園庭の一角です。小さく区切られた様々な形の畑です。
幼稚園の語源であるキンダーガルデンは日本語に訳すと「子どもの庭」。フレーベルは子どもたちの庭造りを幼児教育の大事な要素の一つとしていました。
自分たちで道具を使い植物を育てることは、他の事では得られない学びがあると言います。

見学に行った時は冬で何かを育てる活動を見ることはできませんでしたが、このサイズであれば子ども達もここは自分の庭だという自覚や愛着が持てます。「何がどこに植わっているのか?」認識でき、寄ってくる季節によって変わる虫を確認するのも楽しそうです。そしてそれぞれの庭の個性が出そうですね。

身の周りの仕組みを遊びながら学ぶ

園庭で見かけた日本ではあまり見かけないタイプの固定遊具です。
水や砂をここに流して遊びます。溝に沿って水や砂が流れ歯車が回り、下へ下へ物体は流れていく。そんな自然の摂理を遊びながら体験できます。
どうして歯車は回るのか?水や砂の流れ方をじっと見つめる子ども達の姿が目に浮かびます。
ここまで水や砂を持ち上げるにはどうしたらいいのでしょう?一人ではなくお友達の協力が必要でしょう。実際にやってみると体全体を使う動きでもあります。簡単にすぐできることも大事ですが、こうやって方法を自分で考える遊びも大事ですね。

単純な作業を繰り返す遊びの中から自ら自然について気づき学ぶことができます。こういう何だろう?やってみよう!と思う仕掛けが園庭にはいろいろありました。
切った丸太がそのまま園庭の隅にランダムに置かれていたり、鳥の巣には子どもたちが鳥の絵を描いていました。
こういう取り組みから園庭から自分の身の回りの自然へと、意識がいくようになっています。

そり置き場のある園庭

この写真素敵じゃないですか?園庭にそり置き場があるなんて。
朝の登園の様子を見ていたら、お父さんがそりに乗ったお子さんを引っ張って園に来ていました。
外遊びの時間には子ども達がそりに乗って遊んでいました。
町のおもちゃ屋さんで、このそりを販売していました。
こんな絵本から飛び出したようなそりが生活に溶け込んでいることに驚きでした。

*   *   *

さて、6回に渡りドイツの保育園について書いてきた連載も今回で終了です。最後までお読みいただきありがとうございました。

ドイツ研修旅行の様子は木のおもちゃチッタInstagramにも詳しく書いております。お時間ありましたら見てみてくださいね。

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【ドイツの保育園から見えた 遊びのデザイン】 連載一覧


1.積み木遊びは机の上で?


2.ごっこ遊びには「なりきる工夫」が。


3.家庭的な雰囲気の保育室


4.生活の中に溶け込んだアート活動


5.一人ひとりを尊重する生活環境


6.園庭は自然と出会う場所


横尾 泉
執筆者木のおもちゃチッタ店主、あそび環境コーディネーター、おもちゃコンサルタントマスター
横尾 泉
東京都多摩市の自宅で「木のおもちゃチッタ」を営みながら、保育園や家庭向けに遊び環境のアドバイス、研修などを行っています。【木のおもちゃチッタホームページはこちら】https://chitta-toy.shopinfo.jp/

ドイツの保育園から見えた 遊びのデザイン

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