遊ぶドイツの保育園から見えた 遊びのデザイン

ごっこ遊びには「なりきる工夫」が-取り入れたい? 真似したい!ドイツ保育園の遊びのデザイン2

2021.10.15

ごっこ遊びは世界共通の遊び。ドイツの保育園には、子どもたちがなりきるための工夫がありました。おもちゃ店主のレポート第2回。

ごっこ遊びには「なりきる工夫」が-取り入れたい? 真似したい!ドイツ保育園の遊びのデザイン2

木のおもちゃチッタ店主、あそび環境コーディネーターの横尾です。
この連載では、2020年ドイツの幼稚園で見た、子どものための「遊びのデザイン」についてお話していきます。

子ども一人一人の育ちや遊びを大切にする環境づくりは、保育者の方はもちろん、家庭でお子さんの遊びを豊かにしたいと考えている方にも、きっと参考になると思います!

ごっこ遊びは世界共通の遊びですね。どこの国のおもちゃ屋さんへ行っても必ずおままごとなどのごっこ遊びに使うおもちゃは販売され、その国の食文化が反映されています。
子どもたちはごっこ遊びが大好き。
イメージの世界では誰にでもなれるし何でもできます。

お店屋さん?お客さん?役割を明確にするデザインで、集中して遊べる

写真はお店屋さんごっこの棚です。棚の内側には店員さん役の子が座るための椅子が2つ並んでいました。
ちなみにドイツのスーパーのレジ係は椅子に座って働いています。(日本もそうなればいいのに…)

木製の美味しそうな野菜や果物が並んでいますね。
野菜などが入っているかごには、片付けしやすいようどれを入れるのか写真が貼ってあります。よく見ると写真だけでなく名前も書いてあります。物の名前を書き込むことで文字への関心、興味を誘っているのです。
他のおもちゃが片付けられている棚を見てみると、全部ではありませんが写真と一緒に名前が記載されていました。物の名前を耳と目の両方で認識できるようになっていました。

お店屋さんごっこに使えるこの棚はデザインが違いますが日本でも販売されています。

こういう棚おすすめします!
この棚があるだけでお店屋さんごっこがより楽しくなります。

内側と外側、お店の人とお客さんという役割に、自然と子ども達は分かれます。椅子が2つあるとお店屋さん役ができるのは2人だと子ども達が自分で判断します。

誰がお店の人でお客さんなのか、子ども達はよく言葉で自分は今お客さんだと伝えあったりします。それもコミュニケーションの一つなのですが、棚があるとポジションで役割がわかり、今の自分の役割に集中して遊びこめるようになります。

屋根から棚までの間の小窓のような空間。
こうやって空間が区切られることでここがお店だ、と子ども達が見てわかるようにデザインされています。お店だけでなくお医者さんごっこや美容院ごっこいろんなごっこ遊びに使えます。

棚に引っ掛けたS字フックには手提げかばん、かごが下がっていました。棚やかごから取り出すのも楽しいですが、こういうちょっとした工夫でごっこ遊びにリアリティが出ます。本当のお店の人のような動きができるような工夫です。

自分以外の誰かになりきる!豊富なコスチューム

これも日本ではあまりないと思いますが、保育室にお姫様、騎士、警察官などいろんな人物になれる衣装と小物が用意されています。
そのバリエーションの豊富さに驚きました。

そういえばショッピングセンターに行くと、写真のような多種多様な仮装用のお洋服や小物が、子どもから大人サイズまで販売されていました。この地域のお祭りは仮装をしてパレードをするそうです。そういう文化もこのコーナーに反映されているのかもしれませんね。

自分ではない誰かになりきって遊ぶ。
不思議なもので衣装を着ただけで気分が変わります。

その人はどんな話し方か?どんな身のこなし方か?
子ども達の様子を見ているとよく考えてなりきっているのがわかります。
こういう遊びを通じて自分ではない他人の気持ちをイメージし、どういう言葉で伝えるかコミュニケーション力につながっていきます。
どの衣装、小物を選ぶのか?そこから遊びのデザインは始まっています。

*   *   *

ドイツの先生方が子どもを中心に保育目標を考え、それを「見える化」した、デザインした様子、次回もお楽しみに!

【ドイツの保育園から見えた 遊びのデザイン】 連載一覧


1.積み木遊びは机の上で?


2.ごっこ遊びには「なりきる工夫」が。


3.家庭的な雰囲気の保育室


4.生活の中に溶け込んだアート活動


5.一人ひとりを尊重する生活環境


6.園庭は自然と出会う場所


横尾 泉
執筆者木のおもちゃチッタ店主、あそび環境コーディネーター、おもちゃコンサルタントマスター
横尾 泉
東京都多摩市の自宅で「木のおもちゃチッタ」を営みながら、保育園や家庭向けに遊び環境のアドバイス、研修などを行っています。【木のおもちゃチッタホームページはこちら】https://chitta-toy.shopinfo.jp/

ドイツの保育園から見えた 遊びのデザイン

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