遊ぶ【連載】わくわく遊んで大きくなるために おもちゃ屋さんの「あそび相談室」

相談7:「『ひとりで遊べるおもちゃ』、ありませんか?」

2020.03.13

「ひとり遊び」の準備として大切なのは、「一緒にたっぷり遊ぶこと」?おもちゃ屋さんのあそび相談室、第8回目です。

相談7:「『ひとりで遊べるおもちゃ』、ありませんか?」

「ひとりで遊べるおもちゃがほしいんですけど…」
そうですね、1歳半とか2歳とかになったら、期待したいですよね(それより前はできないし…)。
ご飯を作るときとか、ちょっとひといきお茶したいときとか。
こっちが忙しいときに限ってくっついてきたり泣いたりだだをこねたりするように感じて、
ただでさえ「やらなきゃ、急がなきゃ、ああもう時間がない…」って焦ってるのに、もうっ…(;_;)
というの、わかる。

でももし、お母さんがちょっと見えないと不安がるとか、すぐに呼びに来てなかなか落ち着いて遊べないとかを感じるようなら、「ひとりで遊べるおもちゃ」を探す前に、できるだけ、一緒に遊ぶ時間を増やしてみてほしいなと思います。
子どもが「このひとはわたしのことが好き」「このひとはわたしのことを大事にする」という絶対的な安心感を基本的信頼感といいますが、これが子どものほうにできていないと、心が安定して落ち着くことも、しっかり何かに集中して遊ぶということもできません。

そんな感じがあるなら、大人のほうがまずは腹を決めることがだいじです。
「1日10分だけは用事もしない、テレビもスマホもみないでこの子と遊ぶぞ!」とかね、試しにやってみてほしい。
いつもは洗濯機が鳴ったとかお風呂を洗わなきゃとか「ちょっと待ってて」っていなくなる大好きなひとが、いなくならない。
いつもはスマホが鳴ったら「ちょっとごめんね」って画面を見るのに、見ない。 そんなあたりまえを、子どもに贈ってみてほしいです。

1日のうちに10分だけでもいいのです。 「自分だけを見てくれている」という実感の積み重ねは、子どもに安心をもたらします。気持ちが安定して、行動も落ち着きます。
毎日続けてみると、「あれ、最近なんか楽」そんな実感がありますよ。
大丈夫、そんなに先じゃない、意外に早いと思いますよ。
おまけにこれは「毎日バタバタしてちゃんと遊んであげられてない」という大人の自分ダメ落ち込みにも良いし。

でも「一緒に遊んでくださいね」って言われてもどうしたらいいか…っていう方も、あるかと思います。
おしゃべりもそんなにできないし、散歩や外遊びだけしてるわけじゃないし。
そんな方におすすめなのは、やっぱりおもちゃです。

おとなと子どもの間におもちゃというモノがあるだけで、コミュニケーションはずいぶんとりやすくなります。
赤ちゃんがおもちゃに関わっている姿を実況中継するだけでも、じゅうぶんに良いんですよ。
「積んでみるの?あれ、落っこちた、残念!でもとなりに並んだね。
あ、今度は2つとも持つんだ。どうするのかな…あ、もう一回チャレンジするのね。よし、乗ったね!…」
ほら、実況中継、なんだか間が持ちそうじゃないですか?
まずはそれでいいのです。

一緒に同じことをして過ごしてみれば、動作でもことばでもいろんなやりとりがあって、たがいに気持ちが合う瞬間がたくさんできて、だんだん「子どもとの時間を過ごす」ことに慣れてきます。
一緒に同じおもちゃを見て、触って、目を合わせて、感じたことに共感して、一緒に同じ時間を過ごすだけ。
でもそれこそが、子どもに楽しさと一緒に安心感を、いっぱい届けてくれるのです。

いつでもお母さんを求める気持ちが強くて、心の安定が少なくて落ち着かないんじゃあ、子どもも家族もつらいだけ。
子ども自身のこころが安定していればこそ、「ひとりで遊べる」のです。 そのための大人がするべき大事な準備が、安心をいっぱい感じてもらうということ。
遊びの楽しさと一緒に、「大丈夫だよ、見ていますよ。大好きですよ」の安心を、子どもに贈ってほしいです。

「大好きなひとと一緒にいたい」
「大好きなひとと遊びたい」
これが、子どもの願っていることです。ほら、自分がいっしょうけんめい恋していた頃のことを思い出して!
一緒にいたい、一緒に何かしたい・・・同じでしょ。
こっちを見てくれなければ落ち着かなくて不安でちょっかいを出したくなる・・・同じでしょ!

子どもの心が落ちついて安定すれば、大人の心にも余裕ができます。
そして、あれあれ不思議なことに、ぐずぐずにつきあうのもイライラすることもなく用事が片付いて、時間にも余裕ができてしまいます(これほんと)。
せっかくの子どもとの暮らし、楽しく、楽に、過ごしたいですものね。

でもまあ、「ひとりで遊んでほしい」なんて、大きくなったらこっちが言われますからね!
かばんねこもただ今、地団駄をふんでおります。

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髙橋 美樹
執筆者おもちゃ店店主、おもちゃコンサルタント
髙橋 美樹
群馬県桐生市、木のおもちゃの専門店(とレンタルスペース)「かばんねこ」店主。https://kabanneko.com はじめての子育てでがんばりすぎていたときに、美しいおもちゃたちに出会って開眼。遊びや暮らしを通じて、子どもが自分でわくわくと育っていく姿を尊敬しています。 趣味は読書。子どもにちょっかいを出すこと。

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