遊ぶ【連載】グッド・トイの秘密を見に行こう!

劇的な変化が楽しい!松島洋一さんの「ぼかん」(後編)

2019.07.12

連載第4回目。京都府宇治市でユニークなおもちゃを作り続けているおもちゃ作家、松島洋一さんのインタビュー後編です!

劇的な変化が楽しい!松島洋一さんの「ぼかん」(後編)

「2011年グッド・トイ受賞のおもちゃ“ぼかん”を発明したおもちゃ作家、Mtoysの松島洋一さんのインタビュー後編をお送りします(前編はこちらからどうぞ)。
おもちゃ作家になるまでの道のりやこれからの夢などを伺いました。

現在のお仕事に就かれるきっかけを教えてください。

松島さん:

教育大の美術領域を卒業して公立中学の教員をしていました。
父親が商品のパッケージや企業のマークをデザインする、今でいうグラッフィックデザイナーでした。私も小さい頃から父の職業を傍らで見ていました。絵を描くのが好きな少年でした。美大を受験したのですが、落ちてしまい、合格した教育大学へ進学して、周りと同じく当たり前のように教員になりました。おもちゃなどものづくりにも興味はありましたが、おもちゃ作家としてはごはんは食べていけないと思っていたからです。
でも、教員生活は4年で辞めました。

なぜ、教員を辞めたのですか?

松島さん:

とにかく大変でした。美術を教えていれば良いのではなく、担任を持つ。学級運営をする。問題のある子の生活指導をするなど、一生懸命になればなるほど、疲弊していくような気持ちになりました。
「このまま一生、この仕事にすべてを捧げなくちゃいかないのか?」という気持ちも芽生えてきました。それと同時に「自分が好きなモノ作りをしないで終わるのか?」ということが残念で、「世の中に挑戦したい」と言う気持ちが強くなっていきました。
その時は既に結婚していたのですが、妻がフルタイムの保育士だったこともあり、相談したら二つ返事でOKを貰えたので、辞めました。それが1985年31歳の時でした。

その後はどのようにしておもちゃ作家としての道を歩まれたのですか?

松島さん:

当時は団地住まいだったので部屋の一室に小さい糸ノコを置いて、ホームセンターで買ってきた木で、パズルや組み木のようなものを制作することから始めました。全くの独学です。ただそれだけでは食べてはいけないので、美術教師の経験を生かして専門学校のデザインの講師や子どもの造形教室を経営し、教えていました。
一方でおもちゃ作家としても腕をあげていかないといけないので、機械なども細々と揃えていき制作もしていきました。10年くらいで段々とおもちゃをお店に置いてもらえるようになっていきました。

大きな転機は2001年に同業の仲間達とドイツのニュルンベルグの玩具の見本市に出展したことです。その時にレシオ社やプラントイ社の目に留まり、デザイン契約をさせていたくことになったのです。更には、この見本市で波乗りのおもちゃWAVE(日本名:ウェーブ)はシュピールグート※にも推奨してもらいました。 (※シュピールグート:権威あるドイツのおもちゃ賞。)

これからの夢や目標などを教えてください。

松島さん:

3つあります。
1.アイディアを考えてそれをスケッチブックに描いてデザインの元を考えます。それを試作をしながら形にしていきます。この一連の作業が昔からずっと好きなんです。これからも続けていきたいです。

2.私の作ったおもちゃ達が常設で展示をされている所が増えるといいと思います。子ども達が好きなだけ遊べる場所です。既に東京おもちゃ美術館、おもちゃ王国など全国数か所の施設では展示していただいていますが、もっとたくさんのおもちゃが展示される常設館ができたら嬉しいです。

3.子どもを対象としたおもちゃ作りのワークショップも長年続けています。おもちゃは自分でデザインし、材料などを用意して現場へと持っていき、子ども達に作ってもらいます。これも私が好きなことです。ずっと続けていきたいです。

* * * * * *

安定した教員の仕事を思い切って辞めて、粛々と作家としての道のりを歩んで来られた松島さん。奥さまも近頃はお時間が少し出来たそうで、ご一緒にワークショップなど開催されているとのことでした。
優しいお人柄のその裏には揺らがないご自身の意志がありました。おもちゃを作り始めて30年以上が経っていても、インタビューの中で幾度も「好きなんです。」という言葉が聞かれました。その気持ちが「これからも作り続けたい。」というモチベーションになっているんだと思いました。

インタビューに快く応じてくださった松島さん、どうもありがとうございました!
これからも、松島さんのアイディアでワクワク、ドキドキするようなおもちゃに 会えることを楽しみにしています。

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橋本 光子
執筆者おもちゃコンサルタント、グッド・トイ選考運営委員会 副委員長
橋本 光子
公民館で社会教育指導員として、赤ちゃんから高齢者までの社会教育を日々、企画、運営、進行しています。また、グッド・トイの選考に携わり、1人でも多くのおもちゃコンサルタントが選考に参加できるような仕組みを考えています。

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