遊ぶ【連載】おもちゃ美術館がやってきた! 移動型おもちゃ美術館「キャラバン」物語

体育館が木のおもちゃ美術館になる ~群馬県みなかみ町

2019.03.01

夏休み中の小学校の体育館が、おもちゃ美術館に早変わり! 移動おもちゃ美術館「キャラバン」座長による連載最終回。

体育館が木のおもちゃ美術館になる ~群馬県みなかみ町

「週末、小学校に行ってみると、いつもの体育館が、なんと木のおもちゃ美術館に…!」そんなおもしろい体験を子どもたちにさせてあげたい、という粋な大人がいる自治体があります。
ここは群馬県のみなかみ町。県最北端に位置し、利根川最上流、谷川岳登山口があり、ユネスコエコパーク指定の、極めて自然豊かな地域です。毎年、夏の最中、木育キャラバンはみなかみ町に招かれ、木のおもちゃ三昧の2日間を提供します。この体育館がある新治町小学校は、森に囲まれ、清流が流れ、急峻な高山がそびえる環境の中にあります。

実は学校の体育館は、キャラバンと相性バツグン。まず一面でバーンと広く、移動おもちゃ美術館セットがらくらく入ります。開催地域の皆さんのワークショップやパフォーマンスなどのスペースも十分に取れます。ということはキャラバンが目指す「木のおもちゃと遊びのコラボレーションイベント」がストレートに実現できてしまうのです。そしてこれも大切なことなのですが、セットの搬入がとてもラクなのです。

遊びにやってくる子どもの多くは、新治小学校の子どもたち。平成30年の全校児童数は約200人、しかし平成20年には360人を数えることができました。つまりこの10年で160人減ったことになります。でもキャラバンのこの日は、他の地区からも子どもたちがやって来ていつもより賑やかです。体育館の面白いところは、スペースが十分にあるおかげで、遊びが大きくなるところ。積み木の積み上げ方もスケールアップ。ひとつのおもちゃでじっくりと時間をかけて遊ぶ姿があちらこちらで見られます。

そしてもう一つの主役が大人たち。体育館のあちらこちらで子ども大人の境なく遊びの花が咲き、歓声が上がります。この日は表現遊びの多田純也さんが体育館の一角に、遊びコーナーを設営。十八番の遊びパフォーマンスを次々繰り出して、子どもを巻き込みます。

一方、ステージでは、カスタネットパフォーマー・前田けゑさんがカスタネット芸を披露。カスタネットと言えば、昭和の時代、ここみなかみは日本一の生産量を誇るカスタネットの生産地でした。当時の小学生には懐かしい青と赤のカスタネットのほとんどが、ここから出荷されていたそうです。

ここ数年、全国での移動おもちゃ美術館の開催数は年間50回ほど。そのうちの約半数が自治体の主催で、開催の目的は「子育て支援」と「木育への取り組み」となっています。

みなかみ町役場の小池さんは語ります。「みなかみ町は面積の9割が森。この自然の豊かさを良いものとして実感できるようになったのは、実は最近のことなんです。僕が子どもの頃は当たり前すぎて何も感じなかった。少子化の中で自然を守ることの大切さを逆に見直したことが、エコパーク認定を受けるきっかけにもなりました」。
世界的に素晴らしい自然に恵まれているみなかみ町。木育に取り組み始めたことも、同じ理由によるもの。「子どもたちに自分の地域を大人が自慢できるようになること。地域の豊かさはそこから始まると思います」と結んでくれました。

猛暑の2日間でしたが、子どもたちは一日中、飽きることなく遊びました。セットを撤収し、体育館を後にすると、みなかみ町の山々に見事な夕焼けのひとときがやってきました。木育キャラバンは次の開催地を目指します。そこを日本一たくさんの木のおもちゃの場所にするために。

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曽我部 晃
執筆者移動型おもちゃ美術館 総合ディレクター、おもちゃコンサルタント
曽我部 晃
長男誕生を機に、父と子のコミュニケーションを大切に思い、おもちゃコンサルタントの資格を取得。2009年より移動型おもちゃ美術館「グッド・トイキャラバン」「木育キャラバン」の座長・総合ディレクターを務める。

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