遊ぶ【連載】子どもたちの笑顔のために~木のおもちゃの製作現場から思うこと~

おもちゃはタイムカプセル。おもちゃの「役割」と「最後の役割」。

2019.02.08

木のおもちゃ作家だからこそ伝えたい、おもちゃの「最後の役割」とは? 連載最終回です。

おもちゃはタイムカプセル。おもちゃの「役割」と「最後の役割」。

この連載も早いもので最終回となりました。そんな今回はおもちゃの「役割」と「最後の役割」について私の思うところをお話していきたいと思います。

突然ですが、みなさんは壊れたおもちゃはどうしてますか?

直せるものなら直してまた遊ぶこともあると思います。でも、例えばプラスチックのおもちゃだったり複雑な構造のおもちゃだと、なかなか直しづらくて捨ててしまうこともあるのではないでしょうか。また引越しなどをきっかけにやむを得ず処分することもあるかと思います。それが木製おもちゃの場合も決して例外ではないでしょう。

子どもは遊びをとおして充実感や自信、家族や友達との信頼関係、コミュニケーション能力、知恵、駆け引き、体の機能、言葉など様々なものを身につけます。でもそれだけではなく、幼児期には「自分のものに対する愛着」という気持ちも芽生え始めます。

おもちゃにはそうして芽生えた「愛着」を育むという大切な役割があると考えています。そこから子ども自身の「ものを大事にする」という気持ちにもどこかでつながっていく気がします。

でも、自分が愛着を持って遊んでいたものが、壊れたからといって簡単に捨てられているのを見たら、ものを大事にする気持ちが育まれるとは考えにくいです。
そこで大人のみなさんには壊れてしまったら、面倒かもしれませんが「直す」ということを少しでも試みて欲しいです。たとえ直らないと分かっていても、「直すフリ」でもいいから子どもの前で見せてあげて欲しいなと思っています。大人のそういう姿を、子どもは結構見ています。そうやって直していると興味を持ってのぞきにくることもよくありますし。

保育士時代に職場で壊れたおもちゃを直すのは私の役割だったのですが、あえて子どもたちの目に付くところでやっていました。すると興味を持って見に来る子どもが何人もいました。特に手を出すわけでもなくただ横に座ってじっと見ていた子もいます。

もし、やむを得ず捨てられてしまうのであっても、その前に「直されている姿を見せる」というのが、おもちゃの最後の役割なのかなと感じています。

ただ、私がおもちゃを作るうえで意識していることのひとつにこのようなことがあります。

おもちゃで遊んでいた子どもが20年くらい経って大人になったときに、ふと押入れからキズがついて手あかで汚れたおもちゃが出てきた。
「あー、あの頃これでよく遊んでたな」
「あのときお母さんこんなこと言ってくれたな」
「おじいちゃんあんな顔で見てくれていたな」
「実家はなぜか寒かったな(笑)」
と当時のことをしみじみ思い出す。まるでタイムカプセルのように、それが実現できる製品なのか、ということです。

そのためには使う時期が過ぎても「これは捨てられないな・・・」と思ってもらえるようなおもちゃでなければなりませんし、そう思ってもらえるようなおもちゃ作りを心がけています。

木のおもちゃというタイムカプセルを開けたとき、幸せな気持ちになる。そんなおもちゃを目指してこれからもひとつひとつ丁寧に作り続け、世の中に発信していきたいと思います。そして木のおもちゃにはその力と可能性がたくさん詰まっていると信じています。

中村 隆志
執筆者おもちゃ作家、おもちゃコンサルタント
中村 隆志
1981年生まれ。かつて保育士として5年間活動。2010年ナカムラ工房を立ち上げる。子どもたちと過ごしたなかで感じた「こういうのがあると楽しいな」を形にするべく日々奮闘中。上松技術専門校卒業。新潟市在中。

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