遊ぶ【連載】わくわく遊んで大きくなるために おもちゃ屋さんの「あそび相談室」

相談9:「頭が良くなるおもちゃを探してます!」

2020.05.15

頭が良くなるおもちゃが欲しいと思ったら、遊ばせ方や環境にも、大人の配慮が必要です。あそび相談室、第10回目。

相談9:「頭が良くなるおもちゃを探してます!」

「頭が良くなるおもちゃが欲しいんです!」
「知育に良いおもちゃは?」

これも、たくさんリクエストがあります。

近ごろのお客さまはよく調べられていて、モンテッソーリとかシュタイナーとかもよく聞かれます。
それぞれ独自の教育法や学ぶための道具があり、子どもの育ちや性質をよく見て、考えられて用意された道具たちがあります。
だから、それに沿うようにして作られたおもちゃはやっぱり良いものが多くて、かばんねこでもお勧めする遊びの道具がたくさんあります。

けれど、ぜひ自覚してほしい。
良いおもちゃも、やはり「道具」。
道具は道具でしかありません。
それを与えれば頭が良くなるというものではない。

それを、誰に贈るのか
(どんなことが好きな、どんなことができる、どんな性質の子にあげるのか)。
それを、どんなふうに贈るのか
(ただ「ハイ遊んでね」と与えるのか、おとなも関わってみるのか)。
それを、どんな場所に置くのか
(おもちゃ箱にボガンボカンなのか、見えて手に取りやすいように棚なのか)。
それを、どんなふうに置くのか
(買った箱のままなのか、すべてのパーツを丁度いい大きさのトレイに乗せたり種類別に分けられる器を用意するのか)…。

そんないろいろで、ぜんっぜん、扱われかたも、遊び方も、あなたが求める「頭の良さ」も、違ってくるのです。

そして、遊ぶ環境にも気をつけて。
テレビがずーっとついてるとか(目がもっていかれちゃう!)、
テーブルがふさがっているとか(床よりもテーブルのほうが遊びやすいことも!)、
小さいきょうだいに邪魔されちゃうとか(最後までやりきりたい!)…。

でもこれらはすべて、大人の配慮があれば解決できることでもあります。
「あたまが良くなってほしい」のなら、ただ良いおもちゃを与えて子ども任せにするのではなく、それを存分に使って遊べるように、大人がきちんと配慮することが必要です。

でも、知育!とがんばらなくても、赤ちゃんの頃から、子どもたちはいろんなものに触って、口に入れて調べて、動かして、いろんなことにわくわくとチャレンジしていますよ。

まだまだ少ない経験を総動員して、やってみる。
思うとおりにいくこと・うまくいかないことを経験して、考えて、いろいろ何度もやってみる。
そのうちに、ぽっと新しいことができる…。

そして子どもはその過程で、いろんなことを感じ、知ります。
からだや手指の使い方が器用になり、やりかたを試行錯誤して覚え、だんだんに、少しずつ、いろんなことができるようになります。
それを楽しみながらできるのが、「おもちゃ」という遊びの道具です。

そんな遊びの道具による「体験の知」たちは、子どものなかで混ざりあって響きあって、新しく出会ったことに「応用する力」になります。
そしてまた、自分がやろうとしていることの先や結果をイメージできたり予測できる、すてきな糧となります。

そうやって遊びとともに成長するなかで、
「うまくできた」
「自分で考えてできた」
「予想したとおりになった」
そんな成功体験がたくさんになります。
そしてそんな成功体験があるからこそ、
「集中して取り組むことに慣れる【集中力】」
「自分はできると信じる【自信】」
「成功した体験があるからこそ、【最後までやりきる力】」
そんなすてきな力を子どもたちは獲得していくのです。

こういうことが、「あたまが良い」という表現のなかに大人が求めていることじゃないのかなと、かばんねこは感じています。

そもそも「知育」っていう言葉が良くないですよね。お勉強が得意になってほしい感しかありません。
でもそうやって遊びの体験を重ねてきた子は、自分で考えるくせや、考えるもとになる体験や、応用する力があるので、だいたいお勉強は苦ではない。面白いなと思います。
どんな「あたまが良くなる」をイメージしているのか、おもちゃ屋に教えてくださいね。
「自分でいろいろ試して考えるおもちゃがほしい」とか「数の感覚を身につけたい」とか、ぜひぜひ、要望を!

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髙橋 美樹
執筆者おもちゃ店店主、おもちゃコンサルタント
髙橋 美樹
群馬県桐生市、木のおもちゃの専門店(とレンタルスペース)「かばんねこ」店主。https://kabanneko.com はじめての子育てでがんばりすぎていたときに、美しいおもちゃたちに出会って開眼。遊びや暮らしを通じて、子どもが自分でわくわくと育っていく姿を尊敬しています。 趣味は読書。子どもにちょっかいを出すこと。

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