遊ぶ【連載】突撃!となりの「おもちゃの広場」!

オンラインで「夏祭り」に「遠足」「運動会」も! 楽しさ・喜び・可能性が広がるオンラインおもちゃの広場

2020.09.15

病気や障害のある子どもたちにも楽しさを届けたい!オンラインならではの遊びの場づくりに挑戦しているおもちゃの広場に突撃です!

オンラインで「夏祭り」に「遠足」「運動会」も! 楽しさ・喜び・可能性が広がるオンラインおもちゃの広場

「おはようございます!今日も遊びに来てくれてありがとう!」
パソコンから響く明るい声で始まるのは、オンライン上で開催されているおもちゃの広場。
芸術と遊び創造協会子育て支援事業部がプロデュース、難病児・障害児と、そのきょうだい児を対象にしています。

皆さん、お久しぶりです。おもちゃコンサルタントの加藤理香です。
2018年~2019年にかけて、全国の「おもちゃの広場」に突撃、開催されている方や参加されている方の様子をレポートする連載をしていました。

その時には予想もできませんでしたが、新型コロナウィルスの影響により、「おもちゃの広場」も、地域によっては開催が難しい状況です。
でも、そんな状況だからこそ生まれた、新しい形の「おもちゃの広場」があります。
今回は、私自身も運営に携わっている「オンラインおもちゃの広場」をレポートします!

【目次】

  1. ●オンラインおもちゃの広場とは?

  2. ●始まりはステイホーム期間の5月

  3. ●オンラインの遊びを試行錯誤するおもちゃコンサルタントたち

  4. ●療育ではなく、楽しさを提供する場として

  5. ●8月はオンラインで「夏祭り」!

  6. ●画面越しでも「できたよ!」の喜びが伝わる

  7. ●新しい遊びの場「オンラインおもちゃの広場」




●オンラインおもちゃの広場とは?

『オンラインおもちゃの広場』の参加は登録制。全国の様々な状況下で参加くださっています。
あるご家族はお部屋から、あるご家族は病室から。ZOOMという会議アプリケーションを活用して、オンライン上の広場を訪れてくれます。
自粛期間や土曜日は、きょうだい児さんも一緒に参加、スタッフであるおもちゃコンサルタントたちが繰り出す、あの手この手のアクティビティや手作りおもちゃ、遊びの展開などを楽しむ、約30分のセッションです。

みんなで歌を歌ってのオープニング。続いて、その日の担当スタッフが展開するアクティビティをみんなで楽しんだ後は、小さなグループに分かれます。
ごきょうだいも含めておひとりおひとり名前を読んだり対話をしたり、グループを担当するスタッフが用意した遊びの時間。
それからまたみんなで集まって、その日の感想をお子さんやご家族に話してもらうシェアタイム。そしてエンディングの歌を歌って退出、というのがベーシックな構成です。

画面越しのおはなしや歌を観たり聴いたりするだけではありません。
参加しているお子さんやご家族が、その日のスタッフのお題に沿ったものや作ったものを、おうちの中から持ってきたりカメラを移動したりして見せくださったり。自らお話をしたいお子さんがいたら、スポットライトを当てて感想を聞いたり、親御さんがお子さんたちの言葉にならない想いの代弁したり。
双方向コミュニケーションツールの利点を随所に活かした活動なので、ご家族とスタッフはもちろん、参加のお子さん同士で「お友達」の気持ちを持つこともあります。

●始まりはステイホーム期間の5月

「オンラインおもちゃの広場」を始めたきっかけは、新型コロナウィルス感染防止のため特別支援校や療育園の休校、休園になったことでした。
東京おもちゃ美術館副館長 石井今日子さんのところに届いた、難病児・障害児のママたちの声。
どのご家庭でも、24時間家の中で子ども達と向き合う暮らしは大変だったと思いますが、難病や医療的ケアが必要なお子さんのいるお家で、在宅ワークをしたり、きょうだい児の相手も一緒にすることは、本当に大変だったようです。

「特別支援学校も児童デイもお休み。感染が怖くて、自宅から一歩の外に出せない。お友達や先生と会えないし、生活リズムが乱れてストレスが溜まっている。保護者も子どもと24時間向き合い続けて在宅ワークもままならず、精神的なストレスで心が悲鳴を上げている。」

          

そんなSOSにも似たメッセージ。

「ソーシャルディスタンスを保ちながら、オンラインで子ども達の遊び相手ができないか?」
そんな石井さんの提案に賛同し、呼びかけに応じたおもちゃコンサルタントたちが全国から参加。現在も週2回というペースで途切れなく開催しています。

●オンラインの遊びを試行錯誤するおもちゃコンサルタントたち

初期より関わり、デイレクターとしてZOOM操作や、参加者さんへの連絡窓口などを担当している齋藤ヤルチュン暁子さんは、こうおっしゃいます。

「画面越しの遊びってどうするの?と、当初は試行錯誤でしたが、実際には沢山の楽しい遊びができる!と発見とワクワクの日々です。
遊びの中で自分のお気に入りを見つけた時に『好き・楽しい』の気持ちを伝えてくれる子どもたちの表情や動きの変化を、保護者の方たちと一緒に喜びあい、笑いあい、分かちあえる時間を過ごしています。」

また、長年、難病児・障害児の遊び支援もしている森智恵子さんは、

「オンラインで何ができるのか、どういう方法なら双方向で楽しめるのか?
画面越しでのコミュニケーションに最初は戸惑いましたが、感染を気にせずリラックスできる自宅から家族と一緒に自分のペースで参加できるという利点が見えてきました。
遊びの内容も、手遊びや読み聞かせから、運動会やお祭りもできる!と目からウロコの日々です。個人的には毎回が試行錯誤であり、メンバーのアクティビティに刺激されています。
本来はリアルで遊べるのがよいのですが、どちらの方法でも遊びを届ける活動を進めていきたいです。」とのこと。

●療育ではなく、楽しさを提供する場として

いろいろな得意技や経験を持ったおもちゃコンサルタントが、毎回知恵や汗を絞ります。

ある時には、「運動会」と称して、画面に向かって走る真似をしたり(かけっこ)、ティッシュを丸めて、画面の向こうの箱に向かって投げてみたり(玉入れ競争)などと、ある意味、ごっこ遊びの極みを体験。みんなで一緒にトライするので、不思議な一体感が生まれます。

またある時は、イベントとして「遠足」を実施。
八ヶ岳から、環境教育のプロが、豊かな自然をカメラで切り取り、こどもたちの興味を引くお話を交えながら、鳥の目線になったり虫の目線になったり、という時間を過ごしました。
自然の中に実際に出かけることが叶わない子どもたち・親御さんたちにとって、印象的なイベントになったようでした。

●8月はオンラインで「夏祭り」!

8月は「夏休みスペシャル」として、独立行政法人福祉医療機構の社会福祉振興助成を受け、参加者全員に「おもちゃコンサルタントが選んだ夏祭りセット」を送付。
全員が同じキットやおもちゃを使って、それぞれの場所からアクティビティを楽しみました。中には、木育教材もあり、木のパーツに紙やすりをかけ、手触り、香りを楽しむ、という日も。
視覚や聴覚以外の、嗅覚と触覚を刺激する体験もオンラインで可能だということをみんなで感じた日になりました。

オンラインでの参加は、前出の森さんの仰るように、電車や長時間の移動の心配や感染リスクがありません。周囲への気遣いも不用。お子さんのペースで、お子さんが普段いる場所からの参加なので、緊張感がありません。
一緒にいる親御さんも同様にリラックスしているのがわかります。一緒にお出かけすることが難しい場合のあるきょうだい児さんも、興味があれば、共に参加できるのがこのおもちゃの広場。
日常の延長の、その子らしくいられる場所からの参加が、広場の時間をさらに楽しいものにしているように感じます。

●画面越しでも「できたよ!」の喜びが伝わる

画面に見入っている顔、おもわず体が動いてご家族が驚いている様子、パソコンにスカーフをかけているのを不思議に思ったお母様が、これはお友達にかけてあげてるんだと気づいた驚き…そんな様子も、ZOOMの画面越しに、スタッフに伝わってきます。

「遊びの中でいつも同じ手の形をする女の子のサインは、『できた』という喜びの表現でした。
サインに応えることで女の子からも更なる応答があり、コミュニケーションがより豊かになりました。
参加している子ども達はそれぞれの方法で気持ちを発信していますが、それをキャッチすることで双方向性のやりとりが生まれています。」

                               

普段から病児・障害児の保育に関わっている、高橋朝子さん。
画面越しのお子さんの様子について気づいたことを、「できた」のサインをはじめ、病児保育の経験のないスタッフに共有。それによって、スタッフが参加しているひとりひとりの様子を意識、その子その子に応じた遊びを考えるようになりました。

●新しい遊びの場「オンラインおもちゃの広場」

オンラインおもちゃの広場は、決して対面での広場の代わりではなく、新しい遊びの場の創設。
可能性の発見を追及しながら、子どもたちそれぞれが楽しい遊びの場になるよう、今後も継続して開催していく予定です。

参加に該当するご家族がまわりにいたら、是非お誘いください。
おもちゃコンサルタントやお友達が、オンラインおもちゃの広場でお待ちしています。
「オンラインおもちゃの広場」詳細はこちらから

加藤理香さんの連載「突撃!となりの『おもちゃの広場』」はこちらから

参考記事:「出かけられない今だから、集まろう!オンラインで広がる遊びの場」はこちらから

加藤 理香
執筆者おはなしパフォーマー、おもちゃコンサルタントマスター
加藤 理香
ある時はおはなしパフォーマー、またある時はおもちゃコンサルタントマスター等、活動は多岐に。おもちゃの広場運営お手伝い中。岐阜市在住、活動範囲は北海道から沖縄まで。「どこでもドア」を持っているとの噂あり。

【連載】突撃!となりの「おもちゃの広場」!

この連載の記事一覧へ

遊ぶ育む集まる2020.09.15