遊ぶ日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし

山仕事、農作業に神楽まで。大人への憧れがつなぐ地域の文化・風習/日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし2

2022.09.23

山間の小さな村、椎葉村ならではの暮らしや文化に、子どもたちはどのように触れていくのでしょうか?椎葉の子どもと暮らしをつづる連載第2回です。

山仕事、農作業に神楽まで。大人への憧れがつなぐ地域の文化・風習/日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし2

宮崎県椎葉村在住のおもちゃコンサルタント、池田文です。
普段は、村の交流施設でのおもちゃイベント企画、ベビーシッターとしての訪問保育、小さな学習塾の運営などを通して、地域の子どもたち・子育て中の親御さんと関わっています。

この連載では、山間の小さな村で育つ子どもたちを紹介しながら、子どもの育ちに関する私なりの気づき・学びを子育て中の皆さんや、保育や子どもに関わる皆さんと共有したいと思っています。

今回は、椎葉の子どもたちが、どのように椎葉ならではの暮らしや文化に触れながら育っているか、お話してみたいと思います。
そこには、暮らしの中で大人に認められたり自分でやりがいを感じたりする場面がありました。

目次

季節の節目に、自然に感謝する習わし

風景・暮らしを伝えていく大人

暮らしに参加し、成長の機会を得る子どもたち

季節の節目に、自然に感謝する習わし

最初に、椎葉で恒例の行事をいくつか紹介します。

●もぐら打ち
旧暦の小正月に各地区で行われます。
子どもたちが長い木や棒状のわらを持って各世帯をまわります。各世帯の前で歌いながらもぐらをたたく真似をして厄除けや豊作祈願をします。
まだ寒く暗い冬の夜ですが、大きな子を真似ながら、各家でもらえるおやつを楽しみに一生懸命歩く小さな子たちの姿があります。

松尾地区のもぐら打ち

松尾地区のもぐら打ち

●神楽(子ども神楽)
椎葉の12月は各地区の神楽の時期です。今年の恵みに感謝し来年の恵みをお祈りする、自然とともに暮らしてきた椎葉の人々の習わしで、村内で二十六の神楽が行われます。
夜通しかけて行われる舞いと囃子、そして神楽を囲む地域の人たちの交流で、椎葉じゅうが一年で最も忙しくなる時期です。

子どもたちもこの大事な神楽の継承者。小さな時から、おじいちゃんお父さん、そして近所の優しいお兄さんたちが舞うのを見て、「ぼくもやりたい」と目をきらきらさせています。そして、小学生になって神楽に混ぜてもらい、緊張しながら大人の社会をひとつずつ経験していくのです。

椎葉の子ども神楽

椎葉の子ども神楽

風景・暮らしを伝えていく大人

椎葉には古くは日本各地で行われていた、山を焼いて作物を育てる焼畑農業があります。循環型農業として世界農業遺産にも認定され新たな注目を浴びています。農林業や猟など自然とともにある暮らしの文化として、神楽やひえつき節などが残されています。

印象的なのは、地域の大人たちがこうした行事へとても積極的に参加し、子どもたちにも伝えようとしていること。大人に連れられて参加する子どもも多いですし、子どもたちに伝える機会を設けているものも多くあります。

暮らしに参加し、成長の機会を得る子どもたち

一年の始まりから終わりまで、子どもは地域で大切な行事が行われる際に一緒に連れてこられて、遊びながら大人たちの様子を見て育ちます。
また、習わしや行事など特別な機会だけでなく、普段からおうちの大人に、田んぼやナバ(椎茸)の仕事に連れて行かれる子どもも多いです。小さな時は周りで遊んで、少し興味を持ち始めたら一緒にやってみる、そんな姿を見聞きします。

子どもが育つ中で「一緒にやる」「先にモデルを大人が示す」という場面がとても大事だと思っていますが、椎葉の子どもたちは、実際に行われている習わしや暮らしに参加しながら、自然にこうした育ちの機会を得ていると感じます。

椎葉には、山仕事(主に椎茸栽培など)や牛養い(畜産)、猟や川釣り、木や竹の細工など、自然を相手に身に着けた仕事や遊び、暮らしの技術を持つ人が多く、子どもたちはそんな大人に憧れを持って大きくなります。大人は実際に一緒にやりながら身に着くまで繰り返し、子どもの習得を見守ります。

子ども焼畑

子ども焼畑

椎葉で行事に楽しく参加している子どもたちを見ると、学校の勉強やスポーツだけでなく、日々の暮らしの中で大人に認められたり自分でやりがいを感じたりする場面が、子どもの育ちにとって大切なものであると実感できます。

≪≪≪前回の記事「抱っこリレーが日常に。「子どもは宝」という温かな気持ちの連鎖」

池田 文
執筆者おもちゃコンサルタント。宮崎県の椎葉村で子育て支援に関わる。
池田 文
静岡県出身。2019年4月より、日本三大秘境椎葉村に移住しました。 前職が保育士だったこともあり、椎葉で育つ子どもたちに関心があります。先が見えない時代、子どもたちがいろいろなことに挑戦していける土台ってなんだろう? 椎葉にその答えがある気がしています。現在、村の交流施設でのおもちゃイベント企画、ベビーシッターとしての訪問保育、小さな学習塾の運営などを通して、地域の子どもたち・子育て中の親御さんと関わっています。

日本三大秘境「椎葉村」に移住して考えた 子どもと暮らし

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遊ぶ暮らす2022.09.23