家庭的な雰囲気の保育室‐取り入れたい? 真似したい!ドイツ保育園の遊びのデザイン3
2021.10.29
ドイツの保育園では、子どもたちが安心して過ごせるような環境づくりの工夫が随所に見られたそうです。おもちゃ店主のレポート第3回。

木のおもちゃチッタ店主、あそび環境コーディネーターの横尾です。
この連載では、2020年ドイツの幼稚園で見た、子どものための「遊びのデザイン」についてお話していきます。
子ども一人ひとりの育ちや遊びを大切にする環境づくりは、保育者の方はもちろん、家庭でお子さんの遊びを豊かにしたいと考えている方にも、きっと参考になると思います!
ドイツの保育園へ見学に行って毎回思うのが、家庭的であたたかい雰囲気があるなということです。アニメのキャラクターや可愛らしくデフォルメされた動物などが、壁に貼ってありません。
子どもだからこそ本物を、という考えが伝わってきました。
絵本コーナーには家族の写真も。子どもが安心して過ごせるデザイン

保育室には大きなソファーとクッションが置いてあります。側には絵本が置いてあり、ゆったりくつろぎながら絵本を読むことができます。
クッションなど布物は、トイレトレーニングの時期やコロナ禍の現在は、消毒の手間を考えると取入れにくいかもしれませんね。
でも日本はドイツより保育時間が長いので、このようなスペースがあると、子どもたちは一日の中でくつろいで落ち着いて過ごす時間が作れます。ちょっとしたクールダウンのコーナにもなりそうですね。
出窓には子どもたちと家族の写真が飾ってありました。
この写真があることで、家庭と保育園はつながっているという安心感と、自分は家族のこのクラスの一員なんだという自覚が芽生えます。
家族の写真立てが並んでいる、それだけでもこのコーナーにはあたたかな雰囲気がありました。
片付けに迷わない、アナログゲームコーナー

この大きな棚には、たくさんのアナログゲームが片付けてあります。
ドイツではアナログゲームはとても身近なもので、ショッピングセンターのおもちゃ売り場へ行くと、小さい子から大人向けまで多数のゲームが販売されています。
見学に行った日も先生と子ども達がゲームをしていました。
アナログゲームは箱に入っているので片付けしやすそうですが、幅も高さもバラバラ。
こちらの園ではお片付けの工夫として、テープで色分けしていました。
ゲームの箱のサイズに合わせテープを貼り、その色と同じテープを棚にも貼ります。
箱のテープと棚のテープの色を合わせ棚に片付けていました。
子どもたちが見てすぐ自分で片付けができるようにデザインされていました。
ただ棚に入れるだけでは入りきらなかったり、取り出しにくくなったりしますね。
子どもたちが片付けをする様子を観察し、片付けづらい原因を紐解いた結果、箱の大きさで分けるという方法になったのでしょう。
普段の生活を切り取ったようなおままごとコーナー

この写真はままごとコーナーの一角です。
おままごとに使うお人形と一緒にクッションが置いてあり、食べ物は持ち手のついたかごに入っています。
クッションの素材である布は、子どもたちと相性がいいのです。毎日着ている洋服は布でできていて、それに毎日包まれていますね。
布は可塑性があり、柔らかいので触る、見るだけでも落ち着いた気持ちになります。
色も形もばらばらでごちゃつく食べ物は、かごに入れるだけで見た目もすっきりし温かみを感じました。さりげなく置かれていますが、何だか絵になると思いませんか?
プラスティック製の家電も置いてあり、普段の生活の一部を切り取ったかのようです。何だか物語を感じます。
こういう空間が家庭的な雰囲気を作り、子ども達の遊びのイメージの元になっているのではないでしょうか?
こういう小さなコーナーを作る経験を積むと、部屋全体の環境作りの練習にもなります。
ここで取り上げた小さな工夫を一つひとつ積み重ねることが、子どもの片付けへの苦手意識を和らげ、安心して落ち着いて一日を過ごせるお部屋の雰囲気作りに繋がっています。
家庭的で落ち着いた雰囲気を作ることで、子ども自身も自然と整理された落ち着いた部屋を作れるようになると感じました。
* * *
ドイツの先生方が子どもを中心に保育目標を考え、それを「見える化」した、デザインした様子、次回もお楽しみに!
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- 執筆者木のおもちゃチッタ店主、あそび環境コーディネーター、おもちゃコンサルタントマスター
横尾 泉 - 東京都多摩市の自宅で「木のおもちゃチッタ」を営みながら、保育園や家庭向けに遊び環境のアドバイス、研修などを行っています。【木のおもちゃチッタホームページはこちら】https://chitta-toy.shopinfo.jp/
ドイツの保育園から見えた 遊びのデザイン
遊ぶ育む知る2021.10.29