遊ぶ【連載】グッド・トイの秘密を見に行こう!

劇的な変化が楽しい!松島洋一さんの「ぼかん」(前編)

2019.06.14

今回は松島洋一さんのおもちゃ工房にお邪魔しました。みんながあっと驚くようなアイデアの秘密とは?連載第3回。

劇的な変化が楽しい!松島洋一さんの「ぼかん」(前編)

「グッド・トイ」とは、私たちおもちゃコンサルタントが、おもちゃ選びの指標になるように毎年選んでいるおもちゃで、選考は30年以上続いています。
この連載では、グッド・トイに選ばれたおもちゃをピックアップして、そのメーカーを訪ね、開発エピソード、おすすめポイントなどをインタビューします。どんな人がどんな思いでおもちゃを開発、製造、販売しているのでしょう?

2011年グッド・トイ認定のおもちゃ“ぼかん”。
遊び方はいたってシンプル。名前の通り、付属のハンマーで「ぼかん!」とおもちゃ本体(くさび部分)を打ち付ける。という豪快で痛快なおもちゃです。このおもちゃを初めて見た時は「思いきり叩きつける?!いいの?そんなことをして!!」と驚きと斬新さで目が丸くなったのを憶えています。

発明したおもちゃ作家の松島洋一さんの工房 Mtoys は京都の宇治市にあります。“ぼかん”のおすすめポイントやおもちゃを発明するアイディアの源などをお伺いしました。今回はその前編です。

“ぼかん”のおすすめポイントを3つ教えください。

松島さん:

1、おもちゃには珍しい「叩く」「壊す」ことができる。
2、組み立てて、繰り返し遊びができる。1回だけじゃなく、もう1度やりたくなる。
3、力を思い切り出す。集中して力を込めることができる。

松島さんのおもちゃにはこの“ぼかん”を筆頭に「叩く」(飛んでキャッチ、スピンなど)ものが多くあると思うのですが、どんな所から“ぼかん”ができたのですか?

松島さん:

私の「叩く」おもちゃの中で初期にできたのがこの“ぼかん”です。積み木で遊んでいる子どもを見ていた時、それを壊す子どもがいて。「壊すのも遊びなんだ。」と気づいたんです。それをどうにか、おもちゃにできないか?が始まりです。

ぼかんは8つのピースになっていて、お互い磁石でくっついているのですが、一回叩くだけで、全部をばらけさせるようにするには?と色々試しました。そして、ばらけた後に元の形に戻すのも楽しい。外側には着色して、内具は無垢にして、バラバラになる前とばらけた後の変化を視覚でも楽しめるようにしました。
大人の手の平にちょうど乗る位の大きさですが、それより大きくても打ち付ける力が非常に要るし、小さ過ぎても簡単にばらけてしまう。

遊んだ方の感想で「叩きつけてスッキリする。ストレス解消になる。」というのを聞いたことがありますが、それについてはいかがでしょうか?

松島さん:

私自身はそういう気持ちで作ったことはないです(笑)。劇的な変化が好きなんです。自分がやったことが思わぬ動きになったり結果になったりするその驚き。そういうのが好きなんですよ。

どうやっておもちゃを考えるのですか?日常の中で、ヒントなどがあるのですか?

松島さん:

言葉あそびみたいなところから生まれます。
「叩く」「まわる」という言葉がある。それを繋げてみたら、「叩いて→まわる。」を考えられないか?「叩いて→壊れる」ものが考えられないか?動詞を組み合わせるんです。例えばトランプみたいに、沢山カードがあって、「叩く。」というカードをめくる。次にもう一枚ひっくり返して「まわる」が出てきた。自分にお題をもらったみたいな。それから考え出すようなイメージです。
ぼかんは「叩く→壊れる→くっつける」こういう言葉のイメージから、何かを作れないかを試してみる。仕組みを考えてみるんです。

* * * * * *

「“劇的な変化”が好き」とおっしゃる松島さんご自身の語り口はとても優しく、穏やかです。「ぼかん」をはじめとする、みんながあっと驚くようなおもちゃとのギャップがあるせいか、松島さんを古くから知っている方は「こんなおもちゃを考える人に見えないよね。」とおっしゃるのだとか。

後編では、松島さんがおもちゃ作家になるまでや今後の夢などをお聞きします。どうぞ、お楽しみに!!

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橋本 光子
執筆者おもちゃコンサルタント、グッド・トイ選考運営委員会 副委員長
橋本 光子
公民館で社会教育指導員として、赤ちゃんから高齢者までの社会教育を日々、企画、運営、進行しています。また、グッド・トイの選考に携わり、1人でも多くのおもちゃコンサルタントが選考に参加できるような仕組みを考えています。

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