遊ぶ【連載】木や森の力で社会を良くする「木育」お仕事図鑑

木育お仕事図鑑4「木の家の設計者」

2020.05.29

日本の木で家を設計するなら、木材の生産・流通のことまで見通す力が必要です。木育(もくいく)のお仕事を紹介する連載第5回。

木育お仕事図鑑4「木の家の設計者」

木育のお仕事紹介、4回目は「木の家の設計者」です。

木の家の設計者は、木の家に住む心地よさを伝えるお仕事です。同時に地域の木を有効に使うという意味においても、実に木育的なお仕事です。

コンクリートに囲まれた街中にあっても「木の家に住みたい」という思いを持つ日本人は多いようです。
日本の住宅の6割ほどは木造で建てられていますが、実は国産材だけで家を建ててくれる大手住宅メーカーはありません。

驚くべきことですが、世界有数の森林率を誇り、昔から木で家を建ててきた歴史がありながら、今の日本には地域の木を使って家を建てるということがほぼ不可能になっています。

木育に触れ、木への興味、愛着が高まったときに「地域の木で家を建てることなんてできませんよ」と言われるのは、結構ショックなことです。でも、そんな状況を変えるべく、近頃では様々な取り組みがスタートしています。

地域の木を使うためには、手入れされた森林、建材加工する施設、木材を現場に運ぶ流通システム、家を設計する設計者、施工を行う工務店がひとつながりの線になっていなければなりません。今、国や自治体も支援する形で、地域の木材を使って家を建てる仕組みづくりが始まっています。

木造建築の分野はこれからどんどん広がります

記憶に新しいところでは、オリンピックスタジアムに多数の木材が使われたことが話題になりましたが、平成22年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されました。これによって公共施設には国産材、特に地域材を活用する方向に大きく舵が切られています。建材や構造技術の発達により、今後は3階建ての学校なども木造で建てられるようになっています。

木造建築の分野は、今後は住宅だけではなく、大型公共施設にまで、どんどん広がっていくことでしょう。

家の設計と木を使う仕組みづくりをセットで考えるお仕事

これからの方向性として木造建築の分野は、木材の生産地ともタッグを組んで、設計と木材流通をセットで考えていくような仕組みになっていきます。

木の家の設計者には、ただ木の心地よさを生かした設計をするだけではなく、その家の材料を、どこの山から持ってこれるか?使う材料の適材適所も見極めて建物を完成させるスキルが必要になります。

これからサスティナブル(持続可能)な社会が求められる中で、地域材を活用していく木の家の設計者は欠かせない存在になるでしょう。

【木育お仕事データ】 その4:木の家の設計者

〔活躍の場〕 都市。
〔向いている人〕 接客好きな面とアーティスト気質をあわせもつ人。
〔やりがい〕 でっかい物を作る楽しさ。家も街も環境も作る仕事。



≪次回の記事は2020年6月5日公開予定です≫

≪≪≪前回の記事はこちらから!

前野 健
執筆者岐阜県立森林文化アカデミー講師(木工専攻)、おもちゃコンサルタント
前野 健
木工教員としてモノ作りと木育の授業を担当しています。 学生と一緒に様々な地域の課題に関わりながら、地域材の活用と地域の活性化を両立させる木育プログラムの開発・実践を行っています。ウッドスタート公認デザイナー。 活動ブログ「街と森の交差点」http://machitomori.forest.ac.jp/

【連載】木や森の力で社会を良くする「木育」お仕事図鑑

この連載の記事一覧へ

暮らす知る2020.05.29