遊ぶ園長先生がときめいた遊び日誌~保育園の遊び環境を考える

子どもの興味に応えて変わる2歳児の保育室―保育園の遊び環境を考える#4

2021.07.02

「いま興味があること」にあわせて保育室の環境はどんどん変わります。園長先生が語る保育園の遊び環境、第4回目です。

子どもの興味に応えて変わる2歳児の保育室―保育園の遊び環境を考える#4

じっくり遊ぶことができるように絵本のコーナーに畳を敷いたり、ままごとコーナーの模様替えをしたり。
保育室の環境構成は、子どもの動きを見ながら考えているので、4月の初めとはコーナーの配置がすこし変わっています。

「今、こんなことをおもしろがっている」をキャッチして、さりげなく手作りのおもちゃや素材が用意されているのがうれしい2歳の保育室。子どもの興味や関心に心を寄せる大人の役割ひとつで、遊びが広がります。
そして、手渡す大人の思いが子どもに伝わっているんだなぁ・・・と感じることがあります。

今回は、2歳児クラスの子どもたちの様子と保育者の関わりについてお伝えします。

保育者手作りの「こまち」「はやぶさ」「ドクターイエロー」

だいちゃんは、1歳の頃から電車が大好きです。お気に入りの乗り物の絵本のページを広げて、「これはこまち」「これは?」と指さししながら保育者にたずねていました。わざと保育者が間違えてこたえると、「ちがう!はやぶさ」と教えてくれます。

2歳になって保育室がかわると、カーペットの上に寝転びながら電車を動かして遊ぶ姿が見られるようになりました。電車は人気があり、よく取り合いになるおもちゃでもあります。そんな様子を保育者が見て、だいちゃんと一緒にはやぶさを緑色のク―ピーで描いてジュースのパックに貼って手渡しました。

できあがったはやぶさを持って、窓際で右に左に動かして遊び始めました。
画用紙に描いて貼ったはやぶさは、何回も遊ぶうちに端の方が折れ曲がってしまうのですが、だいちゃんは気にする様子もなく自分のために作ってくれたはやぶさを大切にしていました。

それから数日後のこと。保育室にはやぶさ・こまち・ドクターイエロー、そして消防自動車などの乗り物が並んで置いてありました。
ジュースのパックを土台にし、型がとってあり、中に新聞紙がはいっているのでつぶれたりしない頑丈なものです。ブッカーというテープも貼ってあるので、いつでも拭けるしきれいです。見た目も丁寧に作られており、手に取って見たくなるものです。

繰り返し子どもたちが遊んでいますが、崩れることなくかっこいいままです。
子どもの遊びを傍で見守る保育者がタイミングよく用意してくれていることをとてもうれしく思いました。

ままごとキッチンのエプロンと三角巾

保育室にはままごとコーナーがあります。
キッチンセット、テーブル、食器、食材、人形。実際にお料理する子どもの動きを見ながら、どこに何を置いたらよいのか考え、だれが見てもよくわかるように片付け場所も決めてあります。

食器や調味料、フライパンやフライ返しをどこに置いたらよいか、そこでお料理する人のことを考えて整えるのは、お家のキッチンとまるで同じです。

子どもたちは、そこでお家で自分がしてもらっていることを丁寧に再現しています。
お料理するだけでなく、テーブルにきれいに並べてみんなで食べたりしながら、お母さんの存在を感じているのかも知れません。

このキッチンセットの横にエプロンや三角巾がかけてありました。
子どもたちがお料理したり、いっしょに食べたりする様子を見て、保育者が何気なく用意したものでした。

こうちゃんとしゅんくんはそれぞれお気に入りのエプロンを身に着けると、キッチンに並んでお料理を始めました。お料理の腕も一段と上がったかのように手際の良さが感じられます。何より、同じものを身に着けているのがうれしい様子でもありました。

ちーちゃんはやさしいおかあさん

子どもたちがままごと遊びをするコーナーから少し離れて、ちーちゃんが両手に人形を抱っこしていました。その傍らでもうひとりのお人形が寝ています。よく見るとちーちゃんの小さな手がお人形の背中をやさしくトントンとしています。
寝ているお人形には、やさしく布団がかけられています。
この静かな場所を選んだちーちゃんにやさしさを感じました。

「できるようになったこと」に合わせて整えられる保育室

バンダナやナフキン、巾着、袋などもままごとコーナーに置いてあります。
小さめの手提げ袋には、お気に入りのブロックや積み木を入れて持ち歩いています。
最近では、保育者にナフキンにものを包んでもらい、自分で結び目を開くことを楽しむようになりました。

できることがひとつ、ふたつ増えていく子どもたちを見守りながら、タイミングよく用意し、整えてくれていることが伝わってくる保育室です。
子どもが安心して遊んでいます。

保育室を家庭的な雰囲気にし、遊具を整えていく。
温かい雰囲気、安心して遊ぶことができる環境は、子どもだけでなく大人にとっても居心地のよいもので、ちゃっかりわたしも座り込んでいると「どうぞ」とお茶を出してくれる2歳児さんです。

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加藤 志保
執筆者保育園長、おもちゃコンサルタントマスター、ぎふ木育指導員
加藤 志保
公立保育園で保育士として勤務後、私立保育園に。保育園では「おもちゃの広場」を開催し、子どもの発達や興味に合わせた遊び環境を日々考えています。遊びに夢中になる子どもの姿を、保護者や保育者に伝えていきたいと思っています。

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