暮らす【連載】作業療法士が伝えたい 小さなおもちゃの大きな力

見る力 木を見て森も見て「脳活キューブ」

2018.11.09

「部分」を見て、「全体」を理解するってどういうこと? 作業療法士が語るおもちゃのお話、第2回目です。

見る力 木を見て森も見て「脳活キューブ」

「木を見て森を見ず」とは「細かなところはわかるのに、全体を捉えることができない」ことで、まあまあ経験あるのではないでしょうか?
「あ、そういうことだったのか~」とか「細かなところを気にしすぎていた」と反省しきり。そういう人もあまり落ち込まないで、「脳活キューブ」でもやってみてはどうでしょうか?

脳活キューブ

人間は視覚から得られる情報はとても多くて、例えば「文字が小さすぎて読めない~」となると、得られる情報は低下してしまいます。

この視力とは別に、脳の方では認識力というのがあります。色や形それぞれに反応する(担当する)脳細胞があって、例えば三角に反応する脳細胞、赤に反応する脳細胞があります。それぞれの脳細胞からの情報が集まって、「赤い三角」などを理解するのです。

次に「赤い三角」や「丸」が組み合わさって別の形、例えば「ポスト」の形を理解します。脳細胞と脳細胞の組み合わせは経験や繰り返しでより多くより太くなるので、子どもの頃から遊びを通してたくさん活動することは重要なことです。

小さい子どもは、最初は「大きい・小さい」がわかりません。コップを重ねるおもちゃで遊ぶと、コップの大小がわからないことがあります。「大小」や「高低」などの比較、組み合わせなどは難しいんですね。単純な形については細胞レベルで反応しても、複数の比較や組み合わせた形の理解は経験が必要になってくると言うことです。
比較して組み合わせたりすることを「構成」と言います。形作ったり、それを別の形に変えたりすることで、構成を変えるのです。

「脳活キューブ」は、3cmほどの立方体で、各面にさまざまな幾何学模様が描かれています。立方体を並べて、作例どおりの模様を作るのがルールです。平面でも、積み上げて立体で模様をつくることもできます。

キューブを観察

実は、同じような遊び方で、立方体を棒に刺して模様をつくる「DE-ON (デオン)」(くもん出版)というおもちゃもありました。

「DE-ON」は5cmほどの立方体で、6面のうち2面に穴が通っています。それ以外の4面には三角形と扇形の模様が入っているシンプルな木のブロックです。ブロックは16個あり、それで見本通りにパターンを作るのがルールです。
ブロックをクルクル回して模様を探し、4本の棒にそれぞれ4個ずつ差すことで完成します。見本のパターンは40、だんだん難しい図面に難易度が上がってきます。

デオン

どちらのおもちゃも「全体は細部でできている」と理解することができ、「木を見て森を見る」ことで空間認識に通じますが、プロから見た「DE-ON 」には別の良さがあります。
それは棒があるということです。下から入れるという順番と穴の有無のルールを理解しないと構成できないのです。単純なつくりですが、さまざまな経験を与えてくれるグッド・トイです。残念ながら生産終了だそうで、興味のある方は「脳活キューブ」を試してみてください。

脳活キューブ完成

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松田 均
執筆者作業療法士、おもちゃコンサルタント
松田 均
発達障がい分野を専門にしています。おもちゃに一番詳しい作業療法士と呼ばれています。

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