育む【連載】子どもたちの笑顔のために~木のおもちゃの製作現場から思うこと~

「楽しい」ってどういうこと? おもちゃ製作で大切にしている5つの要素

2018.11.13

おもちゃの「楽しさ」を生む要素とは? 子育て・保育現場で子どもと遊ぶときのヒントにもなる、連載第3回。

「楽しい」ってどういうこと? おもちゃ製作で大切にしている5つの要素

「楽しいおもちゃを作りたい。」

10年前に保育士を退職し、工房を始めた頃から大切にしているコンセプトです。
ナカムラ工房としてのおもちゃ製作はもちろん、東京おもちゃ美術館オフィシャルトイショップ「APTY」のブランド「KItoTEto」の製品として製作している3つのおもちゃ「H-CUBE」「ROPPOU」「TRUCK」にも、その思いは当てはまります。

ではその「楽しい」って何なのか?私はこう考えています。

1. 何かを見つけた時の「発見」
2. 意外な展開を見せた時の「驚き」
3. 何かに没頭して時間を過ごした「充実感」や「満足感」
4. 誰かに認められた時、誰かと関わりながら一緒に何かをする「嬉しさ」
5. チャレンジしたことが上手くいったときの「達成感」

ザックリですが大きく分けて以上5点。これらが入り混じって「楽しい」という感情に繋がるものだと思っています。
そして、そのきっかけとなるようなおもちゃを作りたいと思って、今までやってきました。

H-CUBE
ROPPOU

私がデザインし製作している「H-CUBE」「ROPPOU」は、同じ形の組み合わせによって遊び方の広がる積み木です。
パッと見ただけでは、いかにもおもしろそう! という印象は受けないかもしれません。でも辺や角を大きく切り落としたり、溝の切り方ひとつで積み方の幅がグッと広がります。

その組み合わせによってできる思いがけない形に「驚き」があったり「あ、こんな積み方もできる!」と「発見」があったりします。
また微妙なバランスで成り立つ積み方もあるので、上手くできるようにチャレンジしたり、周りのお友達や家族と協力し、それが上手くいったときはみんなで「ヤッター!」「よくできたね!」なんて「達成感」を共有する場面が生まれたら、それはもう最高に楽しい瞬間ですね。

TRUCK

そして「TRUCK」は、その名の通りトラックをモチーフにしたおもちゃです。ただ日本で見かけるものとは違い、外国で走っているようなカッコいいトラックです。
遊びに男の子、女の子の性別の違いはあまり関係無いと思っていますが、やはり男の子は車が好きな子が多いようです。それは大人になってからもそうで、パパやおじいちゃんもカッコいい車が好きな方が多いのではないかな、と思っています。

この「TRUCK」には幅36mm×高さ18mm×全長144mmの細長い積み木が8ピース付属しています。並べて道路に見立てたり、枠を作って駐車場にしたり。他にはトンネルや道路脇の建物になったりと、遊びにアクセントを加えてくれます。
そして、大好きな大人が自分と同じ気持ちで一緒に遊んでくれるということは、子どもにとっては「嬉しい」ものです。このシンプルな形の中から生まれる物を何かに見立てたりしながら「発見」し、パパやおじいちゃんとお子さんが一緒に、この「TRUCK」で、同じ遊びの世界で遊んでくれたら嬉しいです。

最後にちょっとだけ木についてのお話。以上の3つのおもちゃは「スノービーチ」という名の新潟県産ブナ、同じく新潟県産のスギを使用しています。
使う子どもたちにとっては、新潟県産であろうが他の都道府県産であろうが外国の木材であろうが関係ないかもしれません。
ただ私は新潟で生まれ育ち、現在もここ新潟で活動しています。「新潟にもこんな素敵な木があるんだよ」という気持ちで製作しています。
その木で作られたおもちゃ達で、大人も子ども達も「楽しい」をいっぱい体験してくれることを願っています。

H-CUBEで遊ぶ

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中村 隆志
執筆者おもちゃ作家、おもちゃコンサルタント
中村 隆志
1981年生まれ。かつて保育士として5年間活動。2010年ナカムラ工房を立ち上げる。子どもたちと過ごしたなかで感じた「こういうのがあると楽しいな」を形にするべく日々奮闘中。上松技術専門校卒業。新潟市在中。

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